過去ログ - 上条「俺は、美琴が好きなんだ」フィアンマ「……」
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866: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2013/08/04(日) 00:54:19.84 ID:7NQGR9Tl0

消耗試合も良いところだ。
ストックの失せたマリアンに未元物質製の剣を投げつけ。
それを避けてバランスを崩したところを一発殴るという安直な暴力で沈静化した垣根は、息切れしていた。
体は人間の脂肪と血液にまみれているし、死体の臭いで吐き気がする。

気がつけば、音が止んでいる。

視線をやれば、あの魔女の様な少女はいなかった。
困った様子で残っていたのはオッレルスである。
彼は垣根を見やり、歩み寄ってきた。

「怪我をしているようだが、」
「あん? 問題ねえよこれ位。っつかあのガキは」
「逃げられてしまったようだ」
「チッ。……悪いが、俺は動けねえ。早く行、」

垣根の脚は、マリアンの黄金の鋸を一度だけ受けていた。
体全体を改造こそされなかったものの、奇妙にひしゃげていたのだった。
走ることは勿論、歩くことだって出来ない。

ふと。

彼は、久しい善意の仮面の裏にある悪意に気がついた。
視線を下げる。怪我の手当をしようとしているオッレルスだった。

「治癒術式は長らく使っていなかったから自信はないが…」

言って、彼は手を垣根の脚へ触れさせた。
灯された光は、フィアンマがかつて使った救いの金色でも、癒しの緑色でもない。

呪い、或いは毒物を示す深紅。

垣根の体から、力が抜ける。
どうにか立っていた少年の体が、ふらり、と倒れる。
その体は誰に支えられることもないまま、ばたりと倒れた。
ごぼ、と口から吐き出され、地面へ流れていく血液。

「が、ぐ……?」
「ああ、やはり自信がないことはするものじゃないな。
 ……彼女にとって、君は不要だ。俺だけが居れば良い」

淡白な声。
この男が、フィアンマを守りたいと豪語していたあの優しげな青年と同一人物だとは思えない。
ごぼごぼととこみ上げる血液を嘔吐しながら、垣根はオッレルスを睨みつけた。
今こそ魔神としての狂気を見せつける、最悪の魔術師を。

「だ、まし……が…って…」
「騙してなどいないさ」

放り置けば垣根は死ぬ。

呪術術式がきちんと執行状態にあることを確認して、オッレルスはフィアンマ達を追うべく方向転換した。

「初めに言ったはずだよ。俺は、"彼女を"守りに来たと」

フィアンマの味方ではあるが。
フィアンマの味方の味方をするつもりはない。

僅かに痛む優しさ<良心>を押さえつけ、彼はその場から姿を消した。


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