過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3
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564: ◆kaGYBvZifE[sage saga]
2013/07/07(日) 21:42:34.13 ID:0KKU5keR0
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黒川千秋という人物を語る言葉はいくつか挙げることができるが、そのいずれが彼女を最もよく
表しているかは、実際に会ってみてその印象から推し量るほかないだろう。

それはルナール社の重役の娘であり、歌手を目指す20歳の大学生であり、常にトップを目指して努力を
怠らないストイックさを持った才媛であり、そして『歌姫』の最初のファンの一人でもあった。

『歌姫』が最初に姿を現したあの日。
街をカースの群れが埋め尽くし、呪詛を吐き散らしながら破壊と暴力の限りを尽くさんとする、
その現場に千秋もいたのだ。

ショッピングモールの中にカースが出現し、買い物客がパニックを起こす中、千秋は咄嗟の判断で
スタッフルームのロッカーの中に身を隠していた。
遠くで聞こえる破壊の音と人々の絶叫が身を震わせるのを自覚しながら、千秋はじっと息を殺し、
カースの暴威が行き過ぎるのをひたすら待った。

しかし、カースは視覚や嗅覚といった五感のみならず、人間から発せられるマイナスエネルギーを
感知する超感覚を備えている。
泥の肉体をまとった形ある呪いは、千秋の恐怖心を嗅ぎ取ってスタッフルームに踏み込んできたのだ。

スチール製のロッカーの扉に硬質化した泥の爪を突き立て、扉を力任せにひしゃげさせながら、
その破壊衝動のままに彼女をも害そうと迫っていた。

千秋は、ゆっくりとこじ開けられていく扉の向こうに、黒い泥で出来た不定形の怪物を――顔のない、
しかし激情と悪意に満ちているその風貌を目に焼き付けながら、声にならない呻きを漏らした。


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