過去ログ - クリスタ「誰も私を知らない世界。」
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5: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:28:14.28 ID:g75CBb1AO
特に深夜0時を回った現在、その寒さには一層の拍車がかかっている。
凍ったバナナで釘を打つどころか、立体機動装置のアンカーとして使用できそうな気温である。
第104期訓練兵クリスタ・レンズは灯りの消えた兵舎のベッドの中で、眠りに就く事ができずただただその身を震わせていた。
6: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:30:22.49 ID:g75CBb1AO
人々の吐く息。
そして雪。
いずれにせよ結局はモノトーンだ。
7: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:31:15.37 ID:g75CBb1AO
即座にそのどちらも強いられずに済んだのは、単に社交界の駆け引きに忙しい貴族達が二番煎じの茶葉ほどの価値もない忌み子の末路にまで思考を割くことを億劫がったからである。
その結果、蔑まれながらもどうにか12の齢(よわい)を数えるまで生き長らえる事ができた。
そしてその頃、レイス家ではクリスタの進退について1つの答えが出た。
8: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:32:20.13 ID:g75CBb1AO
その結果、名前を偽って放逐される事を受け入れるなら生かしてやろうという結論に落ち着いた。
こうしてレイス家の忌み子はクリスタ・レンズと名を変え、第104期訓練兵団の門を叩いたのである。
こんな人生を四季に例える場合、冬以外に妥当な解答があるだろうか?
9: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:34:02.03 ID:g75CBb1AO
兵団から支給される布団は重みこそあるが保温能力には優れており、肩まですっぽりくるまってしまえば十分に温かい。
しかし、その温もりに包まれてもなお、体から悪寒が消え去る事はなかった。
何故なら、寒さを訴えているのは体ではなく心だったから。
10: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:34:40.59 ID:g75CBb1AO
訓練兵団に入団してはや3年。
訓練は厳しく食事は粗末だが、理不尽に衣食住を脅かされる事はない。
少なくともレイス家にいた頃よりは遥かに安全で快適な暮らしができていた。
11: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:35:10.85 ID:g75CBb1AO
クリスタ(こういう時は何か楽しい事を考えると良いってサシャが言ってたよね・・・)
同期の仲間の言葉を思い出す。
12: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:35:45.97 ID:g75CBb1AO
あれは子供に良い行いをさせる理由付けとして親が用いる美辞麗句だ。
幼き日のクリスタにそんな夢のある話を聞かせる物好きなどもちろんいなかった。
それどころか本家の子供からこんな言葉をかけられた事もある。
13: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:36:27.77 ID:g75CBb1AO
きらびやかなドレス?
宝石があしらわれたティアラ?
それともまだ食べた事もないほど甘いお菓子?
14: ◆51UnYd7yHM[sage saga]
2013/07/01(月) 21:37:12.48 ID:g75CBb1AO
自分は良い子にしてきたはずだ。
気を抜けばすぐ脳裏に響く罵倒の数々を振り払うべく、必死に必死に良い子であろうとしてきた。
後の美談となる死さえも望むほどに。
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