52: ◆hOVX8kZ7sLVS[saga]
2013/07/02(火) 22:54:36.56 ID:bAq3pyUe0
「あんた、全然楽しそうじゃなかった。そりゃ、そうだよねえ」
「まだ、このあざも消えないんだもん。楽しくもないわよねえ」
「あたし、反省してる。何もできなかった。本当ごめんなさい」
何を言っているのか。母が謝るところなど、どこにもないであろうに。
日々呑みたくないハゲと顔を合わせ談笑しつつ朝には疲れ果てている。
預金通帳に頭を抱え月々支払う借金の欠片。さらに僕の養育費だって。
身も心も壊れそうなのは母ではないか。謝るのは僕のほうだろう。
「生まれてきて」言葉にしそうになったが、僕は押し留めていた。
「いいんだ。僕は強いから。この母親にして、子ありなんだ。どう?」
「それに、まずいと思ったら言うって言ったでしょ。僕まだ余裕だよ」
ごめん。ごめん。謝る母を僕は見ていられなかった。怒りがわいてきた。
当然自らに対してだった。ああ、どうして涙させねばならないのか、と。
「ご飯でも、食べに行こっか。あんまり、高いのは勘弁して」
ようやく泣き止んだ母は、僕の手を取り、明るい声を出して言った。
うん。僕は微笑し、そう言った。いつまでも泣かせてはおけないし。
それに、僕はいい男になるらしいのだ。もてるまで、とても死ねない。
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