895:モヤシンズグリード ◆TspHqBVqH9jK[saga]
2013/10/13(日) 19:30:26.90 ID:hYzcSBUeo
風斬は何も言わず、インデックスの盾になるように両手を思いっきり広げた。
泥で塗り固められた屈強な肉体を持つ石像と華奢な身体を持つ少女。
傍から見れば、力量差など比べるはずもないはずの組み合わせ。
ゴガン!! と、風斬の細い両腕がゴーレムの拳を正面から受け止めた。
衝突のエネルギーは、風斬の体のありとあらゆる関節に瞬く間に伝わり
ともすれば張り裂けそうな激痛が彼女の体中を凄まじい速さで駆け巡っていく。
腕の長さが一気に5センチも縮み、瑞々しい肌に不気味な凹凸が生まれた。
人間なら骨が突き出ているだろうが、生憎と彼女の身体には骨がない。
やがて、ゴーレムのギザギザとした表面が彼女の手の皮膚を削り取り
絶望的な力が彼女の体をアスファルトごとジリジリと押し込んでいく。
重圧に耐え切れないふくらはぎが、ミシミシと軋んだ音を立てる。
そして、それと連動するように、ゴーレムの力が容赦なく強まっていく。
「あ、ァァあああっ!!」
風斬は暴れ回る痛みを少しでも発散しようと、獣のような咆哮を上げた。
直後、圧倒的な力によって無残に押しつぶされたはずの彼女の手足が、
風船に息を吹き込んだように膨らみ、強引に元の形を取り戻す。
治まる事を知らず、絶え間なく降りかかる激痛に風斬の視界は明滅した。
ゴーレムの重圧がさらに増し、同時に体が元に戻る速度が速まっていく。
絶え間ない破壊と再生の狭間に放り込まれた少女の体から
黒板を爪で引っ掻くような不気味な音が鳴り響いた。
「あ……ぁ……」
そんな風斬の背後で、インデックスは呆然としたような声を出す。
止むことのない暴力の嵐の中でも、その声は風斬の耳に鮮明に残った。
そして、それは鋭いナイフのように風斬の心を深く抉っていく。
それでも、風斬はゴーレムの拳から決して手を離さない。
どれだけ心と体が、傷つけられ、潰され、踏みにじられようと。
―――彼女にとって、最初で最後の大切な友達を守る為に
共に過ごした時間は少ない、それでも風斬にとっては人生で最高のひと時だった。
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