過去ログ - とある熾烈の一方通行
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917:モヤシンズグリード  ◆TspHqBVqH9jK[saga]
2013/10/20(日) 21:40:23.54 ID:ivDFo0iyo
九月一日 午後四時三十分 窓の無いビル


「これで満足か?」


外界との繋がりを持たず、まるで世界から遮断されたようなビルの一室で
土御門は空中に浮かぶ映像から目を離しながら吐き捨てる様にそう呟いた。

対してガラスの円筒の中で逆さに浮かぶアレイスターはうっすらと笑うのみ。
返事を返されることはなく、気味の悪い沈黙が辺りの空間を支配していく。
言葉で言い表せない圧迫感に耐え切れず、土御門は矢継ぎ早に言葉を紡いだ。


「かくして様々な信念や矜持を持ったヒーロもヴィランも駒のように操られ、
 また一つ虚数学区・五行機関の掌握する為の鍵の完成に近づいたという訳か。
 あまりにも話がうまく進みすぎている。正直、俺にはお前が化け物に見えるぞ」


暗部組織、超能力者、警備員、風紀委員、魔術師、そして幻想殺し。
そんな面子をアレイスターは直接命令を下さずに思惑通りに動かしている。
その技量と度胸に土御門は戦慄を覚えずにはいられなかった。


「虚数学区・五行機関―――その正体がAIM拡散力場そのものだろう。
 学園都市に住む学生たちが無意識に発生させている力に作られているなど」


AIM拡散力場によって作られる虚数学区・五行機関。
実際のところ、それが有害か否かさえも未だに分からないままだ。

世界地図を塗り替える程の脅威なのかもしれないし、
空から降ってくる雨粒より大したことないのかもしれない。

しかし、今回の一件で一定の衝撃を与えれば爆発的に力を増す事が分かった。
風斬氷華がゴーレムと渡り合った時の力こそその片鱗とも言えるだろう。


「何が起こるか分からないから、滅ぼさずに制御するという方法が考えられた。
 その為の鍵こそ、AIM拡散力場によって生み出された風斬氷華という訳か。
 だからと言って、自我を植え付けて実体化の手助けをするなど、正気とは思えない」


生命体は『生きる為』『死から遠ざかる為』に本能や欲求といった自我をもつ。
つまり、生死を理解できない者に自我など芽生えるはずもなく心を持つことはない。

だが、幻想殺しという善悪など関係ない絶対的な力による死を教え込めば
心を持たぬ幻想は同時に生を理解し、自我を持つようになる。


「何をするか分からないままより、ある程度の思考能力を与えれば
 行動は予測できるし、上手く立ち回りさえすれば脅迫も交渉も出来る」

「生み出される心がお前の予測範囲の簡単に制御できる善人なら問題ないがな。
 もし世界が燃え上がるのを見て楽しむ悪人ならどうするつもりだったんだ?」

「その方がむしろ有難い、差し出すカードを変えればいいだけの話だ」


ふざけやがって、と土御門は思わず心の中でそう毒づいた。
アレイスターにとって、人間とは所詮その程度の認識でしかない。



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