過去ログ - とある熾烈の一方通行
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928:モヤシンズグリード  ◆TspHqBVqH9jK[saga]
2013/10/23(水) 23:44:36.40 ID:VEIDHCZ5o

九月一日 午後五時三〇分 とある病室


入院患者用のベットの上で一方通行はゆっくりと目を覚ました。
自身が何故ここにいるのかを理解できない彼は訝しげな表情をし
さらに体を全く動かせない事を知ると更に不思議そうな顔をする。


「どォなってンだこりゃ……」

「目は覚めましたか?」


ふと声のした方向を見れば、見知った女性がジト目を一方通行に向けている。
体全体で怒りを表しているその様子に一方通行は辟易しながら口を開いた。


「何だ、神裂か」

「何だとは何だこのド素人が」


この場合、いつもなら神裂に対しては何らかの謝罪の言葉を言うはずなのだが
何故か彼は憂い気な表情をしながらまともに彼女の顔を見ようとさえしない。

神裂もその様子に気付いたのか、怒りに満ちていた表情はすぐに心配へと変わる。


「……どうかしたのですか?」

「何故か分かンねェが、昔の事をいろいろと思い出したンだ」


やがて、一方通行は視線を彷徨わせたまま独り言のように口を開いた。
その顔には遠目から見ても分かる程、苦悩の色がはっきりと浮き出ている。


「一年前、見せしめに殺された仲間の死体を見た時は今でも昨日の事の様に思い出せる。
 自分も同じような事を他の人間に散々やってきた癖に、烈しい怒りで骨まで軋ンだ。
 頭の中で捏ね繰り回した理屈や幻想なンて入り込む余地なンざ微塵も無かった。
 だから、仲間を殺した奴に考え付く限りの死よりもはるかに重い報復をした。
 だが、その後で気付いたンだ。俺がその時抱いた怒りを、悲しみを、苦しみを
 今まで数え切れないほどの人間に、あろう事か自分自身が与えていたことに」


一方通行は自身の胸のわだかまりを吐き出すように言葉を紡いで聞く。
神裂は、口を挟まずにそれを黙って神妙な面持ちで聞いていた。


「学園都市に来て、差別こそしたがある程度の人間は救ってきたつもりだった。
 それでも俺に向けられている憎しみが消える日は永遠に訪れることは無い。
 そいつらの怒りに俺は耐えらない。ハッ、笑えよ。俺は所詮この程度の人間だ」


自嘲するようにそう言う彼の目からは、普段の他人を見下すような鋭さは消えている。
その目には、他愛ない悪事が暴かれた小さな子供のような怯えが籠っていた。

しばしの沈黙が流れ、やがてそれを破る様に神裂がゆっくりと深呼吸し、口を開く。



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