過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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126:退廃バカンス(お題:バカンス) 1/3[saga sage]
2013/07/25(木) 19:24:50.55 ID:s0r+pJoT0

「はぁ…」
溜息がつい漏れてしまう。猛暑が続く中の休日出勤。やる気が出るはずもない
室内を快適にするべく設置された大型クーラーの音が、もはや耳触りにしか聞こえない
「辛気臭い顔してんな」
「す、すいません」
4つ年上の上司だった。いつも自分を可愛がってくれ、部下にも人気のある人だ
「新人には、夏が山かもしんねえなあ。この時期にやめる奴は、とにかく多い」
「しかも、このクソ暑い中ときたもんだ。思うだろ、クーラー効いてんのかよってな」
「本当ですよ…」
もう帰りたい。なんでこんな会社に入ったのか。後悔しかない
「たまにはぱーっとバカンスにでも行きたいよな。知ってるか?フランスでは一カ月丸々休暇がもらえるのが普通なんだと」
「マジですか?信じられませんよ」
なんだそれは。こちとら有給だって碌に取れないんだぞ。生まれる国を間違えたか
「だよなあ。俺たちなんて、ゴールデンウィークで三連休もらったら発狂して喜ぶんだぜ」
「土曜日が休みなら、ラッキーですよね」
「日曜に出勤命令が出なければ、お祝いだな」
「……」
「……」
「……この辺にしとくか」
「はい。そうしましょう」



本当に、なんなんだろうか。こうして毎朝起きて会社に行って、書類に目を通して、上司に了解をもらって
狭苦しい部屋の中で昼食をとって、眠気を抑えて商談に向かって、終わったらタイムカードを押して、誰もいないアパートに身を放り投げて
働き始めの頃は、何もかもが新鮮だった。慣れない道を歩いて通い、知らない人ばかりの職場で口と思考をフル回転させて
失敗しまくって部長に怒鳴られて、初めて商談に成功して珍しく褒められて
初めての給料は…給料袋なんて今はなく、当たり前のように振り込みだったのには驚いたっけ
こうして自分の力で稼いで、少ない給料をやりくりして生活を維持する。サバイバルゲームをしているかのような感覚で、少し楽しかった
しかしそれに慣れてしまった今は、お金が少なく苦しい生活以外の何物でもない
「…帰るか」


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