過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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180:ハッカのお話 1/2(お題:薄荷) ◆B6DgJzOWA.[sage]
2013/07/28(日) 22:40:08.47 ID:kH39JpV00

 カランカランと缶を鳴らすと甘い飴ばかりが出てくる。
「禁煙するんですか?」という、同僚の声が聞こえてきた。
 視線は俺の手にあるサクマドロップに向いている。
「ああ、最近懐が厳しくてね」と缶を振ってみせると、軽く頷いて納得してくれた。
「でも、値上がりしてからだいぶ経ちますが?」
「だからこそ。他の事にお金が使えない日々が長かったから、後悔できたんですよ」
「なるほど」
 佐久間は今度は深く頷いて見せてから「お目当てはやはりメンソール。ハッカ味ですか?」
と聞いてきた。
「ああ。けれどもう選り分けて食べきってしまってね」
「そうでしたか」
 というと、佐久間は仕事の手を止めて体ごとこちらを向くと「なら、ハッカの代わりに、それ
にちなんだ話なんかはどうでしょう」と語りだした。
「おや、何かあるのかい?」
 そう答えたのは、半ばは気分転化のため。もう半ばは期日が切迫しているはずのこの部署内で、
どうも弛緩した空気が流れていて、それに流されたせいでもあった。
「例えば、そのドロップのハッカ味。その原液には色がないとか」
「というとあの白さは……?」
「気泡の白さです。他の色と区別がつきやすくするためにあえて一手間入れているようですよ」
「なるほどな」
 こんな風にのんびりとばかげた話をする余裕があったのはいつごろぶりだろうか。
「もう一つ、ハッカはシソ科の植物らしいんですが……」
 それはそれほど興味があったわけでもなかったが、この久々ののんびりとした会話のキャッチ
ボールは楽しく、結局無意識のうちに「そうなのかい?」と聞いて話の続きを促していた。




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