235:戦士の世代 3/3(お題:一人の兵士、不感症、デパ地下) ◆d9gN98TTJY[sage]
2013/08/05(月) 21:28:32.24 ID:sokAIkud0
結果として、バブルは崩壊したのだ。その名の通り、実態経済などではない、膨れ
上がった無価値な価値観に踊らされた泡沫の夢として。
多くの地方都市が借金に喘ぎ、数多くの大企業が崩れ、更に多くの地方経済が失速
しはした。もはや数えるのも困難なほど商店街は崩壊するものと相場が決まった。
好景気の夢を見る管理者がいるばかりで、末端の労働者のほとんどは豊かな未来が
訪れるなど、心のどこかでそれを期待したいと願う思いはあっても、心底から希望を
抱けることは無いだろう。
誰もがわかっている。日は沈んだのだ。
あらゆる情報が説明している。これから長い夜が来るのだと。
矢折れ刀尽きるまで戦った彼らが、死んでまでやり続けたそれは、敗戦だったのだ。
だがそれでも、経済は死に絶えてはいなかった。
まだデパ地下のマーケットは盛況だ。
もし彼らがまさしく企業戦士だったとするなら。ビジネスに生きるビジネスマン
だったとするならば、まだ生きている。
かつての企業戦士達が生み出した、多様な価値観に挑戦する為の、ライバルを飲み
込んで己の特色をも売り込む多彩な出店計画は今も定番となって現代に息づいている。
だがそこにも戦士の姿は失われて久しい。
安定した職場。つまり社会に必要とされる実際的な仕事として。実際的な仕事。
つまりすでに社会に需要と供給が存在しているありきたりな仕事がそこにある。
永遠に広がってそうな夢をも見れた未開の地で、ドラゴンの如き夢幻と一人戦う
戦士の姿はそこには無い。
個を尊重する風潮は確かに世に満ちている。挑戦しているつもりの者はいるだろう。
だがそれは社会のオーダーにしたがって戦う一介の、一人の兵士としての挑戦で
しかない。
彼が勝てば誰か負ける、限られた戦いの場で人相手に戦う者がそこにいる。
兵士世代の気持ちなど戦士の世代には分からない。戦士の世代の気持ちなど兵士の
世代には分からない。
お互いに不干渉で、お互いが不感症かのように思って相手を見る。
兵士の側からは、戦士は皆平等に分かち合う為に、もう夢など見ずに今あるものを
大事に守るべき感覚がないのかと。
戦士の側からは、兵士は己の為に例え幻想かもしれなくても一人で勝ち取ろうとする
感覚がないのかと。
そういう意味で、今いる者たちは戦士ではない。
ゆえにこそ、かつての彼らは企業戦士だったのだ。
誰か任せでは無い。市民の側からの電力会社があったように。
国とつながり腐敗する以前にあったかつての希望の光のように。
放言の為ではない、未来の為の三本目の矢が矢が放たれることがあるのなら、……
その時まで。
今度は夢ではない、本物の未来のために戦う戦士が生まれるその瞬間まで、企業戦士の
魂は今もデパ地下に残っているのだ。
失わせない為に戦う、何人もの一人の兵士達に守られて。
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