過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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499:No.3 結婚前夜 4/10  ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/09/01(日) 14:57:37.44 ID:ho2+SDFr0

 彼女の得意料理であるオムライスを食べ終え(何度もしつこく感想を聞かれた)、俺が後片付けや皿洗いをする。明日の
主役の花嫁を、無駄に疲れさせるわけにもいかないし、これぐらいは俺がやっておかなくてはいけない。
 それが終わって二人で落ち着く時間が出来ると、何でもないようなテレビ番組を見たり、昔一緒によくやっていた花札を
したり、最近買ってきたマリオカートをしたり、そんな普段通りのことをして、式の前日を過ごしていった。
「美加、先に風呂入ってくれば?」
 九時を過ぎて眠たげに目を擦った美加を見て、俺は気を遣ってそう言った。
 美加はこくんと頷いてから、へにゃっとした笑顔を見せる。
「あー……うん。そうしようかな。今日は早めに寝ようと思うし」
「ああ、そうした方がいいな。風呂にゆっくり浸かって、それから思う存分寝ろ」
「えへへ、うん、そうする」
 それから四十分近く時間をかけてから、美加は顔を火照らせて風呂から上がってきた。彼女は風呂が空いたことを俺に告
げて、そして少しだけ神妙な顔をしながら、パジャマ姿で廊下の一番奥にある和室へと向かっていく。
 その和室の戸が閉められた後に、少しだけ何かを待つような間があってから、静けさに満ちた空気を伝って、ちんと鳴らさ
れる鈴(りん)の音が聞こえてきた。それからまた、長い長い沈黙が訪れる。この時間だけは(もちろん部屋は離れているけ
れど)彼女は何も喋らないし、俺だって物音を立てない。
 沈黙が始まってだいぶ時間が経ってから、ほんの少し目を赤くした美加が、居間に戻ってきた。俺はなんだか少しだけ居た
たまれない面持ちで、顔を背けながら声をかける。
「挨拶してたのか?」
「うん。明日、無事結婚しますよ。見ていてくださいって」
「そっか。多分、あっちからさ、見ていてくれてると思う」
「そうだね。うん……そうだといいな。翔ちゃんも、お線香あげてきたら?」
「ああ」
 俺も彼女に言われて、奥の和室に向かって腰を上げた。
 明日の結婚式が、どうか万事うまく進みますように。どうか見守っていてください。と、そう告げるために。




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