過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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716:ゆっくりと空っぽになる(お題:さよなら)  10/10 ◆/xGGSe0F/E[saga sage]
2013/10/08(火) 02:42:05.64 ID:j/UhbHsu0
 僕は悪くなった気分を戻すために、冷蔵庫の扉を開けてお姉ちゃんをリビングへと移動させた。そうだ、僕らが愛し合っ
ているところを見せれば、そしてこの抜け殻が美樹なんて名前ではない他人だと分かれば、アイツも帰ってくれるだろう。
僕はそう思いついて、笑みが浮かぶのを止められなかった。早速、お姉ちゃんの服を脱がせて、お姉ちゃんのいやらしい体
を、全裸にした。柔らかくて豊満な胸も、固まった黒々とした陰毛も、全てが僕の前に曝け出されていた。僕は、自らも服
を脱ぎ始める。なんだか、興奮が抑えきれない。僕の陰茎なんてもうそそり立つぐらいに勃起してビクビクとしているし、
心臓は信じられないくらい高鳴っている。僕はゆっくりとズボンを降ろしながら、仁王立ちになって、お姉ちゃんの前に立
った。なぜだか圧倒的な征服感が心の内から湧き出して、止まらない。僕はそのままお姉ちゃんに抱き着く。汚らわしい僕
が、お姉ちゃんを汚している感覚は、すさまじい快感を生み出した。陰茎からは、信じられないくらいの白い液体が放出さ
れた。僕はそのまま、お姉ちゃんの柔らかい乳房に頬ずりしながら、その柔らかい肉体を思う存分に堪能する。異常じゃな
い。そしてお姉ちゃんと見つめ合ってキスをしてから、ようやく満を持して、お姉ちゃんと繋がる。その生まれて初めて、
女性と結ばれる瞬間。僕は唐突にあることを思いつく。その愛し合った恰好を保ったまま、さっきの男に見せつけるのだ。
それはとてもいい案に思えた。そうすればアイツは帰ってくれるだろう。僕は早速、お姉ちゃんと繋がった姿勢で、玄関ま
で行くことにした。僕は異常じゃない。お姉ちゃんの体は歩くたびに、ぐにゃりぐにゃりと動き、首がいろんな方向に動き
始める。どんどん美しい彼女が空っぽになっていく。いつしか彼女は、僕にとっての神から、ただの女性の代用品へと変貌
を遂げていた。気持ち悪い。僕は異常なんかじゃない。美樹じゃないお姉ちゃんは歩くたびに、髪の毛が抜け落ちて、醜い
頭部を、どんどん晒していく。脳みそもなくなった彼女の頭は徐々に潰れていき、目玉が飛び出して、廊下をころころと転
がっていった。先ほどの男は驚くだろう。だってこれは美樹などと言う女性ではない。僕の人形なのだ。空っぽの、魂のな
い人形なのだ。だったら、それを拾って好きにするぐらいどうでもいいじゃないか。これはもう、ただの偶像で、この世に
生けるものではなくて、永遠に失われてしまったものなのだ。だからあの男は、こんな空っぽの人形に囚われているべきで
はないのだ。まるで空気が抜けていくように、お姉ちゃんの体から中身が消えていって、すでに骨さえもなく、皮だけが僕
の下半身に張り付いている。僕はその恰好のまま玄関の扉を開けた。その瞬間に、大勢の男たちが僕の部屋に突入し、そし
て僕の身柄を押さえ床にたたきつけた。
「容疑者確保!」
 僕は無理やり背中に回された両手に手錠をかけられ、大勢の男たちに醜い姿をさらしながら、笑っていた。なにせとても
面白いことが目の前で起こっていたのだ。
「どこだ、美樹! 美樹の抜け殻は!」
 警察に続いて入ってきた青年は、皮だけになったお姉ちゃんの抜け殻を靴で遠慮も無しに踏みつけながら、必死に叫んで
いた。廊下に転がっていた目玉は警察の者たちによって踏みつぶされ、お姉ちゃんの生きた証は完全にこの世から消え去ろ
うとしていた。
 僕の神様は消え去ってしまった。僕の希望そのものは、みんなに踏み潰されてしまった。
 僕はずっとずっと、次に縋る物を探しながら、象徴になる希望を探しながら、絶え間なく笑い続けていた。
 やがて、僕は心療内科みたいなパトカーに乗せられて、棺桶みたいな独房に入ることを許された。
 そこが僕にふさわしい場所なのだと、どうせ最初から分かっていたんだ。
だって僕は、ここ数年間をかけて、徐々に内側から良心が消え去ってしまっていたのだから。時間をかけて、正常な部分が消
え去ってしまっていたのだから。脳みその判断を司る部分が、そして理性が欠け続けていき、僕の良い部分が例の現象によっ
て消え続けてしまっていたのだから。この町に住んでいる限りは、やがてはこの肉体も消えていくのだろう。かつての正常だ
った僕のかたちさえ残さずに。それがこの町のルールなのだ。
 そして宗教も希望をも失った僕は、やがてただの空気人形となるしかない。
 ああ。
 僕も早く、この世から消え去りたい。
 魂ごと完全に。
 こんな不完全な魂など、消失してしまいたい。


 ――――了――――


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