過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」短編集
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[sage saga]
2013/07/13(土) 19:19:12.22 ID:OcKQEmd6o
静かに深呼吸をして、彼女は席を立った。
千穂「ちょっと早いけど、もう戻りましょう、真奥さん」
真奥「え、ちーちゃん、ちょい待ってよ」
自分のそもそもしたかった話ができず慌てる真奥だったが、
千穂「駄目です、聞きません」
彼女は微笑んで彼の言葉を遮った。
千穂「前に言いましたよ。私が真奥さんのことを好きでなくなるときは、私が決めます」
千穂「だから、聞きません」
彼女の胸に宿る想いは、未だはっきりと形を残していた。
たとえ届かぬものだとしても、それは彼女にとってかけがえのないものだった。
はっきりと口に出して断られたら、この想いを消さなければいけなくなる。
それは嫌だった。いつか――それがいつになるとしても――自然と消えるまで、千穂はそれを大事にしておきたかった。
少しのあいだ千穂を見つめたあと、真奥は観念したように頭を掻いた。
真奥「……ほんと、これだから人間ってやつは」
千穂「そうですよー。真奥さんももっと人間の気持ちを勉強してください。むしろ遊佐さんが可哀想です」
真奥「……頑張るよ」
休憩時間が終わる。
彼らは笑い合って、職場に戻った。
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