過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」短編集
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[sage saga]
2013/07/13(土) 19:18:45.54 ID:OcKQEmd6o
駄目だ。千穂が嘆息する。
この人には、もう少し具体的に話さないといけないんだ。
千穂「真奥さん、ちょっと真面目に想像してみてくださいね?」
真奥「お、おう?」
千穂「もしもですよ、遊佐さんの会社に、年頃のかっこいい男の人がいたとします」
実際にはテレアポの職場は女所帯だが、まあそういったこともあるかもしれないと千穂は続けた。
千穂「それで、その人が遊佐さんを好きになるんです。遊佐さんも悪い気はしなくて、だんだん仲良くなって」
千穂「その人と遊佐さんが、二人で遊んでるとこを偶然真奥さんが目撃するんです」
千穂「……そしたら、どんな気持ちになります?」
言われたとおり真面目に想像しているのだろう、腕を組み真奥が黙りこむ。
……やがて、その表情は苦いものになった。
真奥「……俺が口を出せる筋じゃないが、……嫌だな」
ぽつりと言ったその一言は、本当に嫌なのだと分かる、吐き捨てるような一言だった。
千穂(なんだ。……やっぱりそうなんだ)
いっそ清々しい気持ちで天を仰ぐ。
彼の抱いた気持ちに名前をつけてやることはできたが、それをしてやる義理は千穂にはなかった。
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