73: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 18:56:03.52 ID:EnRHzSex0
僕が意識を強く持ったのは、観測者から、不幸が告げられたからだ。
そうだ。僕は、幸せになる為に、不幸せにならなければならない。
僕が不幸で人生を終えれば、僕の願いは取り消され、世界は戻る。
大きな背中をしていた父も、小さくも大きな存在だった母も。
ふたりは二つの小さな壺の中に収められ、僕の元へと帰ってきた。
葬儀その他の段取りをしてくれていたのは、他でもない、先生だ。
「大丈夫なわけもねえだろうが、しっかりしろ。前を見て歩け」
「はい。すみません。ありがとうございます。僕は。強くなる」
「そうだ。あたしから、まともな事は言えねえけど。強くなれ」
いつもぶっきらぼうな先生が、今日を境に、少し優しくなっていた。
僕が泣いていると、黙って隣に居てくれた。ただ、隣にいてくれた。
彼女はどうしてか、泣き喚く様子もなく、現実を静かに受け入れた。
「お前が困ってりゃ、あたしが手を貸してやる。だから前を見ろ」
「今は不幸でも、いつか幸せにしてやる。あいつもいるだろうが」
「はい。僕には、ふたりが居ます。すぐに立ち直ります。すぐに」
「すぐじゃなくてもいい。気持ちの整理は、そうそうつかねえよ」
「ゆっくりでいい。少しずつでも、前に進めりゃあ、それでいい」
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