20: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/16(火) 00:57:40.88 ID:OPYTK7tZ0
「落ち着いた?」
「はい……」
自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、二人は地べたに座り話す。
杏子さんの珈琲を飲みなれたせいか、あまり美味しいとは思えなかった。
「その……もう、何も聞かないほうがいい?」
あんな様を見られれば当然の問いなのかもしれない。
一砂にすれば、当然聞かれないほうがいい。
「……履歴書、書いた時に気づいたんです。俺は高校一年じゃないんだって」
少しだけ間をおいて、一砂は語り出す。
深入りし過ぎない程度に話せることだけは話しておくべきだと考えた結果だ。
ハルを納得させるに必要だと思った。
「え?」
「俺と同い年のヤツは、高校二年なのかもしれない」
ハルの素っ頓狂な音声を遮って言葉を続ける。
「それを確かめる術はある……けど、知ることが怖いんです」
一砂の言葉の意味を、ハルは少しずつ理解しながら聞きに徹した。
「今日ウチにきた二人は、何かを知っていると思います……でも、その先を知ってしまうと、恐ろしいモノが……」
「俺の知らない何かが、怖い」
自身でも何を言ってるのかわからない。言いたいことを言葉に出来ていない気がする。
伝えるための言葉を探るだけでも、変に思考が回りそうで怖かった。
「考えたくないことが、思い出したくないことが……ある」
「……そっか。そっか!!」
俯いたまま喋り終えた一砂に、ハルは明るい声を投げた。
何がそうなのか。意味がわからないままに一砂はハルの顔を見つめる。
「ま、よくわかんないけどさ!!」
わかんねーのかよ。と、一砂は内心でどうでも良さそうに呟いた。
だが、当のハルは笑顔で一砂の肩を叩きながら言葉を続ける。
「でも一砂が苦しんでるのはわかるからさ、アタシは全面的に協力してあげよう!!」
「キツくなったらアタシに相談しな。他言はしないからさ」
「ハルさんに、相談……ですか」
この状況を相談するにも、これ以上どう相談すべきなのかわからない。
「おぅよ。アタシはオネーサンだからね!!」
何を持って自信満々に受け答えているのかわからないが、一砂はその勇む姿に少しばかりの安堵を覚える。
きっと、相談することはないだろうけれど「ありがとう」との礼を伝えた。
そのお礼に更なる自信を得たのか、ハルはお姉さん澄ましに一砂の手を引っ張って牽引していた。
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