過去ログ - 続編・羊のうた
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 23:02:26.85 ID:sOwD8WLk0

18:00時目前になり、少しずつ客足が増えてきた。
ハルはいそいそと動き回りながらも、時折一砂へジト目を送る。

「……」
一砂は杏子から渡された簡易履歴書に記入しながら、心の底ではアンタのせいだろ。と念を返す。
ただ、好意であったことから少し申し訳ないと思っていた。

「ふーん、二つ下かぁ」
履歴書の生年月日欄を除いたハルが言った。

「……あれ?ハルさん、やっぱり高校生じゃないですか」

「えっ?なんで?」

「だって俺の二つ上なら高三ですし」
考える間もなくわかることであった。やっぱりハルさんは背伸びしていたのだと。

「いや……ガッコは途中で辞めちゃったけど。今年で十九だよ」
計算違いは誰にでもあることだとさほど気にしていないのか、ハルは皿洗いに移った。

「……?」
ハルが中退の経歴を持つことはさほど気にならなかった。
一砂は明らかな違和感を覚える。二つ上なのに十九歳……これは、一体どういったことなのか。

「一砂君。経歴書出来た?」

「はっ……はい」
恐らくは早生まれか何かが関係しているのだろう。一砂は、今まで人の誕生日や何やを深く考えたことはない。
聡明だろう店長に経歴書を見せてしまえば、きっと違和感は解消される。そう思い、問題箇所の生年月日欄を訂正することなく渡した。

「……」
杏子は上から順に目を通している。それも、ゆっくりと。
経歴で人の何がわかるだろうか。通っていた中学や部活で人間性がわかるはずはないだろうに。早くしてくれ……と、一砂には焦りのような感情が募り始めていた。
何故この程度のことで焦りなどを覚えるのか、自身ですらわからない。

「うんっ。明日の17:00に来れるかな?」

「はい!!」
にこやかな笑顔で合格をくれた杏子に対し、一砂は元気に返事を返した。まるで霧が晴れたかのような爽快な色が着いた音声で。

「じゃあ宜しくね一砂君。これから忙しい時期だから助かるわ」

「いえ……こちらこそ宜しく御願いします」
手を差し出す杏子に握手で答える。

「あ、それとなんだけど…・・・」
言葉を発した杏子の笑顔は、先ほどまでとは種類が違う。まるで可愛い子供を諭すのような……そんな笑顔だ。
その表情に気づいた一砂は、再度内心に靄を生む。

「生年月日ね、間違えてたよ」



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