118: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/25(日) 06:06:57.83 ID:79dYTcmBo
『やっぱり千秋さんは、どこにでもいる普通の女性ですよ。声楽がお上手で、かなりの美人という点を差し引けば、ですが』
私は、その眩しさを誤魔化すように、お世辞の皮をかぶせた本心を言う。彼女は嬉しそうに笑うと、
「あら、口説いているのかしら?」
と、冗談っぽく笑った。
『……一つ、聞いてもよろしいですか』
私はそう尋ねた。彼女は、なにかしら、という表情で私を見返してくる。
そんなきょとんとした表情の彼女へ、意趣返しのように私は、質問をする。
『私は、凡人でしょうか?』
彼女が私にした質問とは、ほとんど真逆の質問だ。それを、私は彼女へ投げかけた。意図は、ほとんどない。強いて言うなら、何というか、未練を断ち切るためだろう。
やれ神童、やれ才子と持て囃された、幼いころの記憶と決別するために。
私の知らないところにあっただろう、”昔は神童だった”。そんなちっぽけなプライドを捨てるために。
217Res/148.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。