過去ログ - 八幡「だから…………さよならだ、由比ヶ浜結衣」
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830: ◆QiIiNKb9jA[saga]
2013/10/19(土) 23:42:31.28 ID:IdSKSuAc0
……にわかには信じられなかった。雪ノ下雪乃の言った言葉が。対人関係についても姉のようになりたかった。つまり、

人とうまくやりたかった。俺は今まで勝手に、彼女にはそれをやる能力があるものだと思い込んでいた。でも、それより

も自分のポリシーを優先するためにあえてそれをしないものだと――――。

だが、本当はそうではなかった。はじめから、彼女に選択の余地などなかったのだ。彼女がそれを望んだところで不可能

だったのだ。それぞれアプローチの仕方は違うとはいえ、陽乃さんと葉山が雪ノ下を気にかける理由がようやくわかった

気がする。雪ノ下は強いから、いや強くあろうとしているから自分でそれを選択したという体裁を取っているというだけ

のことに過ぎなかったのだ。俺は彼女にかける言葉が思いつかずにいると、向こうが先に言葉を続ける。


「もちろん私だって最低限の社交辞令は身につけているつもりではあるし、多少のことなら…………。でも、結局は我慢

しきれなかったみたいね。悪意を受け流すとか、本音と建前を使い分けるとか、周囲に合わせるとか……」

雪ノ下が吐露したことに対する慰めになるのかはわからなかったが、彼女の澄んだ瞳を見て俺はこんなことを口にする。

「……水清ければ魚棲まずとも言うしな。まぁ…………お前の場合は清すぎて、魚が棲めなかったってところだろ」

「ありがとう……比企谷くん」

雪ノ下はそう答えて、ソファの座面に置いていた俺の片手を掴む。そして、両手で胸のあたりまで持ち上げると彼女は

目を少し潤ませて微笑みながら、こう続ける。


「だから、あの時…………あなたがそのままでいいって言ってくれた時、私は……本当に嬉しかった」

「ま、まぁ……あれは半分自分に言い聞かせるみたいなところもあったけどな」


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