2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/01(木) 23:07:53.92 ID:a9tfMA/V0
星を見に行くことになった日。
レッスンを終えたアナスタシアを拾って目的地へと向かった。
万が一事故を起こしても怪我が少ないようにと、いつも後部座席に座らせている。
バックミラーに映るアナスタシアは居心地悪そうに車に揺られていた。
「………それなりにかかるから、横になっていていいぞ」
「いえ………大丈夫です」
「………そうか」
おせっかいを焼いてしまったと反省し、運転に集中する。
先輩方は比較的アイドルと言い方は悪いがべったりと接している人が多い。例えば、前述の渋谷凛のプロデューサーは毎週渋谷凛の家で夕飯をご馳走になっているらしい。事務員がスキャンダルに怯えだすほどに親密な関係になることで彼女たちをよく知りプロデュースしていくという方針は彼女たちを誰よりも大切に思うプロデューサーの鑑ともいえる姿勢があってこそのものだろう。
先輩方はそういう在り方もいいが、仕事上のパートナーとして付き合っていくというのもある、と道を示してくれた。
自分とアナスタシアの在り方は、そういうものかもしれない、と考えたその時、
「あの………プロデューサー」
アナスタシアが、不安そうに声をかけてきた。
「どうした?」
問い返すと、彼女は一度目を逸らした後、勇気を振り絞るかのように手をぎゅうと握り、口を開いた。
「Пассажирское место………助手席に座ってもいいですか?」
「助手席? ………すまない、酔ったのか?」
後部座席は比較的車酔いしやすいと聞いたことがあったのでそれかと思ったが、首を横に振られた。
「いえ、そんなことは………ただ」
「ただ?」
アナスタシアは言いづらそうに口をつぐんだ後、それでも言葉を続けた。
「………隣に誰もいない後部座席は、少し寂しいです」
「………そういうものなのか」
「はい………」
うつむくアナスタシア。
いつもは運転している側だからそんなことはまるで気づかなかった。
「それは、すまなかった。今路肩に止めるから、その時に」
「………いいんですか?」
「ああ。こちらも、誰かが隣にいてくれた方がありがたい」
「そうだったんですか………」
交通量が少ない道に出るまでしばらく沈黙は続いた。
しかし、バックミラーに映るアナスタシアは先程よりもいくらか安らいで見えた。
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