過去ログ - 白菊ほたる「手を取り合って」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/04(日) 18:26:37.22 ID:J9Yav5ZU0


  「ほたるちゃんには、苦労を掛けるね」

 私をスカウトした色眼鏡の男性は、とんでもない嘘吐きだったのです。
不思議ですよね。北海道から鳥取、鳥取から羽田、羽田から東京へと向かう間彼の言葉がずっと胸の内でこだましていました。

 何の根拠も無い言葉。それを口にした彼の横顔は、白いスズランに隠れて良く見えませんでしたけど。
ああ、この人は私と違って今がとても幸せなんだろうなって……そう考えたら……また悲しくなってしまって……

ほたる「私がお世話になった事務所は、全部潰れてしまうんです。
    新しい事務所にお世話になるんだから、大事な事だから……言わなきゃいけないと……ずっと、ずっと思っていたのですけれど。
    ……勇気が……出なくて……。その内また潰れちゃうんじゃないかって……すみません。
    今まで……黙っていました。私がいると……みんな不幸に……。
    すみません……すみません! ずっと、ずっと秘密にしてたんですけど、悪気は……謝ってばかりで……すみません……」

 やっと言えました。
東京で彼に会うなり、私は今まで押さえつけていた気持ちを全部吐き出さざるをえませんでした。

 これできっとスカウトのお話はお流れ。でも、仕方がありませんね。私が悪いんですから。
もう関西・中国圏の事務所では私を雇って下さらないでしょうし、下調べしておいた東京の事務所を幾つかあたってみましょう。

  「明日はきっといい日だよ」

 私の両手に、今度は白菊が押し込まれました。私と同じ名前の……
この方はひょっとしてお花屋さんなのでしょうか?

ほたる「……信じて、いないんですか。私の言った事を。
    ……それとも、すごく、前向きなんですか」

 私の両手がそっと慈しむ様に包み込まれました。

  「おいで、ほたるちゃん」

ほたる「どうして……どうして……そんな事を言うんですか。
    そばに……居てくれなくてもいいのに。
    幸せで……いてくれればそれでいいのに」



 灰かぶりにはガラスの靴も、カボチャの馬車もありません。でも白菊はありました。
白菊だけは……ありました。





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