過去ログ - 白菊ほたる「手を取り合って」
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/04(日) 18:27:49.00 ID:J9Yav5ZU0


  「おいで、ほたるちゃん」

 お花屋さんに手を引かれ、東京を巡ります。
その間に色々な事を教えて頂きました。

 彼は芸能関係者では無い事、所属しているのは芸能事務所では無い事、でも上司からは前向きな話を頂けた事。
だからアイドルになりたいとの私の夢は、必ずかなうと言ってくれました。
何の根拠も無い言葉。それを口にした彼の横顔は、白菊に隠れて良く見えませんでしたけど。



  【ブティックShi-no】

 お花屋さんに連れてこられたのは、高級婦人服の専門店でした。こちらに勤めているそうです。
母がこちらのカタログを定期購読していた事を思い出します。東京に限らず関西圏でも有名なお店なのでしょう。
面接の為に裏口から社長室へと通された私は、小さくても手入れの行き届いた部屋だなと物珍しくあれこれを眺めていました。


  「貴女がほたるちゃんね。Shi-no共同経営者の高橋礼子よ。よろしくね」

 ジャケットを軽く羽織りながら社長室へとやって来た女性は、そう名乗りました。
まるで古い映画で見たマリリン・モンローの様に、何気ない仕草なのに大人の魅力が満載でくらくらしちゃいます。

ほたる「は、はじめまして……白菊ほたるです。
    実は暗い話で申し訳ないのですが以前所属していたプロダクションが倒産してしまって……。
    すみません……その前も……その前も……。あ、でも私、頑張りますので!!」

 背を伸ばし、精一杯胸を張って言葉を伝えます。

礼子「良し、合格。
   固くならなくてもいいわ。別にとって食おうって訳じゃないし。
   それに女の子には、誰だってシンデレラガールを目指す権利はあるわ」

 えっと、もう面接は終わりなのでしょうか? まだ履歴書の提出もしていないのですけれども……。
ソファーへと座るように手で示されました。大人しく指示に従います。

礼子「直ぐに消え去るかもしれない子へ、私からあれこれ言うつもりはないわ。
   私はただチャンスを与えるだけ。もちろん幾つかの条件は付けるけれどもね」

 そうですよね。そんなにうまい話がある筈ありませんからね。

礼子「うちは自前のモデルを抱えるだけだけれども、形式上芸能事務所としての届け出も出してあるのよ。
   なにかと融通が利くから。だからアイドルになりたいとの、ほたるちゃんの夢に対しては道を示す事が出来るわ」

 そう語る礼子さんの目は――私を見ていない?
いえ、確かに視線は私へ向けてくださっているのですが……意識は隣へ向けられているような……。

礼子「ほたるちゃん。貴女はアイドルアルティメイトへ挑みなさい。
   これが貴女へ出すただ一つの条件よ。この世界はね、実績だけが全てなの。
   厳しい物言いになるけれど、うちに必要なのは実績の出せる人間だけなのよ」

 【アイドルアルティメイト】通称IU。
年に一度開催され、真のトップアイドルを決める歌番組。あの日高舞が優勝した……。
挑むものは数あれど途中の予選や本選で敗退すれば敗者の汚名だけが残り、そのまま引退するケースが多いと聞いています。
それに――私が挑めと。





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