過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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868:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/27(水) 22:28:50.00 ID:cHjlU9dDo

 もう無理だった。今までは意識して考えないようにもし、口に出すなんてもってのほか
だと思って自分の中に封じ込めていたこと。

「お兄ちゃんの初恋の人ってママだったよね?」

 いつも自信に満ちていたお兄ちゃんがうろたえたところを見たのは初めてだったかもし
れない。

「・・・・・・何言ってるんだ。おまえは」

「ようやくわかったよ。普段ならお兄ちゃんはこんなひどいことを考える人じゃなかった
もん」

「おまえの言っていることは意味わかんないよ」

「普段のお兄ちゃんなら妹ちゃんを利用して使い捨てるようなことはしないでしょ」

「今の俺だって使い捨てるとか利用するとか考えているわけじゃない」

 あたしはお兄ちゃんの弁解に構わず話しを続けた。もう今まで自分に課してきたたがが
はずれたのだ。

「お兄ちゃんが我が家を守ろうとしてくれたことは確かだと思うけど。でもお兄ちゃんが
本当にしたいのはママをお兄ちゃんの元に取り戻すことでしょ」

「僕の元じゃない。僕たちの元、僕たちの家族に母さんを取り戻したいだけだよ」

「・・・・・・それって違うよね? あたしとかパパなんてお兄ちゃんにとってはどうでもいい
んだよね。ママがお兄ちゃんのところにいればそれでいいんでしょ」

「おまえ。何の根拠があって」

「パパとママは今回のことが起きる前だってあまり仲がよくなかったでしょ。あたしはそ
のことが悲しかったけど、お兄ちゃんはそのことには全然悩んでいなかった」

 お兄ちゃんは再び黙ってしまった。

「お兄ちゃんが悩みだしたのは、ママに好きな人ができてからじゃん」

「黙れ」

「これ以上、お兄ちゃんのすることには協力できない。妹ちゃんはあたしの親友なの」

「おまえはお兄さんが好きなんだろ? お兄さんと付き合いたいんだろう」

「だから?」

「そのためにはあの度を越えたブラコンの妹ちゃんの気持を僕に向けないと、おまえはお
兄さんとは付き合えないよ」

 あたしは不意を打たれて黙ってしまった。お兄ちゃんは妹ちゃんの気持を楽観的に捉え
ているのだと思っていたけど、実はそうではなく妹ちゃんが好きなのはお兄さんだと最初
から見抜いていたのだろうか。

「もうすぐシャチのショーが始まるんだ」

 自分を取り戻したらしいお兄ちゃんが冷静に言った。「見に行くぞ」

「シャチなんか見たくない」

「いいから行くぞ。あそこで妹ちゃんたちを捕まえる」

 お兄ちゃんはもうあたしの方を気にせずに歩み去ってしまった。


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