890:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/03(火) 22:25:41.88 ID:C4ok9ZQlo
<妹の怒り>
拗ねていたあたしはさっきとは逆にお兄ちゃんからの電話で呼び戻された。逃げ出した
ことに後悔し始めていたこともあったし、集団行動を乱すわけにはいかないこともわかっ
ていた。さっきもお兄ちゃんにはそう言った手前もあったし。
妹ちゃんは何の気まぐれかわからないけどお兄ちゃんが座っていた後部座席に入ってい
た。何でそうなんだろう。妹ちゃんは自分の行動がお兄さんとお兄ちゃんを惑わせている
と考えたことはもないのだろうか。彼女はあたしの唯一の親友だった。でも今の妹ちゃん
が自分の感情だけを優先していて、他者の感情を慮っていないことを認めないわけにはい
かなくなってきた。
お兄さんとお兄ちゃんを競わせ自分への愛情を試しているかのような彼女の行動。
お兄ちゃんについては自業自得とも言える。ママへの思慕から妹ちゃんを利用しようと
しているのだから。でもお兄さんはどうなるのだ。以前はともかく今のお兄さんは純粋に
妹ちゃんを家族として慈しもうとしているのだけど、妹ちゃんの行動はそう決心したお兄
さんをいたずらに刺激するだけだ。わざとしているのだとするとたちが悪い。
それでもお兄さんの隣に座れたことは幸運だった。あたしはお兄さんに謝罪しお兄さん
は苦笑した。あんなことくらいで動揺してはいけなかったのだ。お兄さんにとってはさっ
きの発言は無理もないとあたしは思えるようになってきた。妹ちゃんに振られ実際につら
い思いをしたことは確かだったのだから。
「さっきはごめんな。勝手におまえの行動の意味を決め付けるようなこと言って」
お兄さんが車を運転すながらそう言った。
「あたしこそひどいことを言ってごめんなさい。それに出会い方がああだったからお兄さ
んには誤解されてもしかたないです」
「悪い」
「でも今朝、夜明けの海岸で話したことは嘘じゃないです。それだけは信じて欲しかっ
た」
「今さらだけどわかったよ」
「よかった」
あたしは勇気を出して片手ハンドルで運転していたお兄さんの左手に手を重ねた。
「ちょっとさあ」
「大丈夫です。妹ちゃんからは見えません」
「・・・・・・うん」
「大丈夫ですよ。こんなことでお兄さんに選んでもらおうなんて考えていませんから」
「別にそんなこと考えてたわけじゃねえよ」
「何か急がなくてもいいような気がしてきました。妹ちゃんとの関係とか女さんとかお兄
さんはゆっくり考えたらいいんじゃないかと思います」
半ば自分に言っていたのかもしれないけど、あたしの言葉にお兄さんは素直に納得して
くれたようだった。
「そうだな」
お兄さんが前を見つめながらそう言った。
「それで少しでもいいからあたしのことも候補に入れておいてください」
「・・・・・・わかった」
「お兄さんと仲直りできてよかった」
「やっと笑ったな」
前方を見つめて運転しながらお兄さんが言ったその言葉にあたしは何でかほっとした。
「へへ。あまり顔を見ないでください。さっき少し泣いちゃったから変な顔してるでし
ょ」
「全然変じゃねえよ。むしろ可愛い」
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