過去ログ - 天井「どうしてここまで来たのだろうな」
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226: ◆n7YWDDtkCQ[sage saga]
2014/08/03(日) 23:21:06.52 ID:ymz5I64P0

・微妙に捏造入ります


膝の上でPDAを、右手では携帯をそれぞれ弄りながら指示を飛ばす布束に従ってハンドルを切ってみると、
本人が宣言した通り実に軽快に車が進む。
助手席を横目で見れば、訪問を伝えるためのメールを打ちつつ、
周辺一帯の交通状況や何やら複合的なデータを地図に被せてゆっくりと指先で辿っていた。
外にはビルや街路樹が白くぼけながら流れていく。

天井「本当にナビゲートが上手いな。車を運転する訳でもないのに」

布束「Could be. 助手席に乗るのだって同僚のお姉さんと一緒の学会の時くらいだけれどね」

本人はなんてことのないように話すが、回数をこなしたわけでもなく、
運転の勘もない布束がスムーズにそれを実行するというのは実際のところ大した才能ではないだろうか。
センスと言ってしまえばそれまでだが。

天井(いや、そもそも布束は『天才少女科学者』なのだったな)

漫画やドラマみたいなフレーズでも、この学園都市では荒唐無稽とは限らない。
『自分だけの現実』と対になり能力の根幹となる演算力、さらには記憶力や思考力、感受性などを含めた広い意味での脳力。
都市が主導する開発でこれらが発達した学生は、仮に無能力者でも特定の分野で飛び抜けた才能を発揮することがある。

天井「ん? そういえば……。今聞くことではないかもしれないし、ノーコメントでも良いんだが。
   布束の能力は何なんだ?」

今更な疑問だった。
視界はフロントガラスに戻しておきながらちらちらと布束の方を気にすると、曰く形容しがたい微妙な表情をしている。

布束「By Jove... あなた開発官なんだから書庫のデータ見れるでしょう」

天井「いや、あまり人の個人情報を探るものではないだろう。自分から言わないから知られたくないのかとも思ったし」

空間移動能力者を探したり上条のデータを調べたりもしたが、それはそれ、これはこれというべきか。
同僚という意識が強い布束のデータを検索するのは何となく気が引けてここまで来たのだった。

布束「私が言わなかったのはもう知っているかと思っていたからよ。Meanwhile, 能力ね……」

天井「寿命中断はいいからな」

何か知恵を捻り出そうとする素振りがあったため釘を刺してみると、ふて腐れたような気配が左側から漂ってくる。

布束「ま、良いわ。Nothing but, 無能力者よ無能力者。折角だから分類は秘密で。
   それこそ読心能力や透視能力の異能力でもあればこの状況で少しは役に立ったんでしょうけれど」

天井「悪い、そういうつもりで聞いた訳ではなかったが」

前置きがてら溜息を吐く。
天井は目的地を正確に把握していないが、布束のPDAを覗き込むととんとん、と一点を示された。

天井「まぁ、藁をも掴む心境なのは確かだ」

布束「Chording. それに関しては同意するわ。……あ、次の次で左折して。四つ目の交差点の左手前角の寮ね」

元々不安や焦りを誤魔化すためにしていたような会話だ。
区切りがつけば口の動きは止まり、ただ真っ直ぐにアスファルトを走っていく。

春上の住居は近い、だが誘拐の解決という大目標は、どれだけの距離にあるのかも見えてこない。





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