34: ◆iIfvn1jtvs[saga]
2013/08/20(火) 21:33:18.15 ID:A3JfcJLv0
彼女の左手が蠢く。
そして青年の内臓の一つを掴んだ。
「見つけた」
「あ、あぎ、ひ――――」
激痛は、彼の口から声にならぬ悲鳴となって虚空へと溶けていく。
込み上げる痛みは彼の全身を蹂躙していく。
全身の皮膚を舐め回される様なゾワリとした不快感が体を包む。
「分かる? 今私が握っているのはあなたの武臓」
激痛が走る。
臓器を握られるという常人では決してありえない状況とその痛みは彼から冷静さを奪っていた。
だが、なぜだろう。
その激痛の中にはひどく妖艶で甘美なものがあった。
「あき、き、いぃ――――」
姫の右手が万力の様にゆっくりと、しかし着実に武臓を握っていく。
キリキリと音が鳴る気がする。
心臓が早鐘を打ち、煮えたぎる鍋に入れられたように熱くなる。
それが悲鳴なのか喘ぎなのかも分からない。
痛いのか、気持ちいいのか、それともその二つが混ざり合っているのか。
今の彼にはどちらとも言えない。
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