35: ◆iIfvn1jtvs[saga]
2013/08/20(火) 21:41:09.87 ID:A3JfcJLv0
「痛いでしょ。でも大丈夫。すぐに楽になれるわ」
彼女の屈託の無い笑顔が見えた。
無邪気で、心底楽しそうな。少女の様な笑顔が。
その笑顔が綺麗だと青年は思った。
敵の笑顔だと知りながら、それをずっと見ていたいと思ってしまった。
馬鹿だと彼は心の中で呟いた。
自分を殺そうとしている相手に好意を抱くなんて、正真正銘のお馬鹿野郎だ。
しかし彼はその馬鹿げた気持ちを否定はしない。
なぜならその気持ちに偽りが無い事も、その気持ちが揺らがない事も彼は知っているからだ。
だからこそ、その馬鹿げた感情を尊重してやろうと思うのだ。
彼は道化。
目の前の暴君のお姫様を楽しませるピエロ。
ならばこそ、ここで死ぬわけにはいかない。
まだまだ、暴君を楽しませなければいけないのだから。
ここで死んでしまったら、誰が暴君のお姫様を楽しませるのだ。
萎えかけた戦意を蘇らせる。
心の底に沈んだ、熱い何かを引き上げる。
繋ぎ止めろ。
思い出せ。
何を?
全てを。
今ここを生きるために必要な全てを。
212Res/143.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。