過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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468:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/22(日) 16:37:40.00 ID:9lqdvaLCo

「つまり、わたしが言いたいのはね……」

「無理するな、って?」

 俺が訊ねると、従妹はちょっとだけ足を止めた。
 それから顔を俯けて、立ち止まったまま、小さな声で呟く。

「……うん」

「みんなそう言うんだ」

「それだけ、みんなに心配されてるってことでしょ?」

 足音だけが響いている。空は白くて、通りは静かで、たぶん世界中から人がいなくなったらこんな感じだろうと思う。
 それは心地良い想像だった。旅行で観光地なんかに行くことがあると、いつも人込みにうんざりする。

 どこかの山にどこかの修験者だか俳人だかが登ったという山道があって、そこに行ったことがある。
 パンフレットによれば古式ゆかしい建築物と自然の美しさが売りらしかった。
 勾配はきつく足元は不安定だった。にもかかわらず人込みは水の流れみたいにうねり続ける。
 足を休めれば邪魔になるし、急ごうにも人が邪魔で進めない。人に縛られているのだ。

 山道の途中には立て看板があり、その道を昇った俳人が残した俳句が書かれていた。
 それは山道の途中、疲れの中で野花を見たときの安らぎを詠んだささやかな俳句だった。

 人の流れは立て看板の前でも止まらなかった。俺はその倒錯に吐き気を催した。




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