109: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:38:24.90 ID:S7s+Ln97o
ぼんやりと人波を眺めていれば、どこからか「にゃあ」との声。
あらと視線を落とすと、いつの間にやらベンチの前にでっぷりと丸い猫が御座します。
耳の上から尻尾の先まで真っ黒けの猫ちゃんは、再びひと鳴きすると、よっこらせとでもいう様子でのろのろと立ち上がりました。
そのまま、『とてとて』というよりは『ぼてぼて』といった具合で歩くと、こちらを気にするように何度も振り返ります。
110: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:38:54.79 ID:S7s+Ln97o
猫ちゃんはすれ違う人々を気に留めることもなく、ずんずんとアーケードを進んで行きます。
天下の往来もなんのその。全ての道は我がものであるといった風情ですから、自然と人間の方が避けていくのでした。
後に続く私はモーゼにでもなった気分です。最も、人の海を割っているのは猫ちゃんなのですが。
さて、この黒猫さんはこのままアーケードを行くのかと思ったのですが、途中細い裏路地へと進路を変えます。
111: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:39:33.75 ID:S7s+Ln97o
体中に葉っぱや埃をつけて漸くに辿り着いたのは木造の建物。
何とか読める、掠れた文字を追えば食堂と書かれているらしく、どうやら飲食店であるようでした。
猫ちゃんは器用に引戸を開けると、ゆったりとした足取りで中へと消えていきます。
子供のような冒険をすませ、程よくお腹はすいております。先導する猫がはいっていったこともあり、私は「御免下さい。」と暖簾をくぐりました。
112: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:40:25.28 ID:S7s+Ln97o
「済まないねぇ。昔からこういう奴なんだよ、コイツは。」
ポリポリと後頭部を掻きながら男性は言います。
113: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:42:19.34 ID:S7s+Ln97o
程々に会話を楽しむと、そろそろ空腹が気になってくるものですから私は辺りを見回します。
カウンターの上、壁、振り返ってテーブル席の方。どこを見てもお品書きが見当たりません。
これは困ったなどと思っていると、男性が声を掛けてくれました。
114: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:42:52.76 ID:S7s+Ln97o
あーでもない、こーでもない。むむむと暫く唸りながらやっと決まったのはフォー。
米粉で作るベトナムの麺料理でございます。
それも唯のフォーではありません。日も昇り少し気温が上がってきた時分ですから、冷製のものを頼んでみましょう。
これならそう易々と用意できるものではないに違いません。
115: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/01/11(土) 21:48:39.73 ID:S7s+Ln97o
などと意味もなく盛り上げてみましたが、結論から言えば完敗の一言。
私の注文から一拍程間を置いた後、ご主人は「あるよ。」と短く発します。
彼の言葉の通り、十分程でカウンターの上にはフォー。
いくらなんでも早過ぎではないでしょうか。
116: ◆bsVOk5U9Es[sage]
2014/01/11(土) 21:50:45.26 ID:S7s+Ln97o
気づけば年が明けているという恐怖
本日はここまででございます
117:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/12(日) 08:56:22.96 ID:VbXAqZQEo
おつかれさまでございます
本当にえびすさまだったりしてとなんとなくおかしくないのがふしぎ
118:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/02/11(火) 17:13:42.48 ID:u0f/uwV90
ほ
119: ◆bsVOk5U9Es
2014/02/11(火) 23:03:25.37 ID:jqoNS2MWo
「結局のところ、なんでああも次から次へと頼んだものが出てくるのか分からん。」
ピザを食べ終えた男性は胸元のポケットへと手を伸ばしましたが、何かに思い当たったようにカウンターへと下ろします。
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