44: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 22:00:20.19 ID:5XV/thQ7o
そんな有難いお話を聞いた私は、何だかこのヘアピンが愛おしいものに見えてきたのですから現金なものです。
代金を支払おうと鞄から財布を取り出すのですが、老婆はお金を受け取ろうとしませんでした。
「若い子と話す機会なんて、この歳になるとそうそうないのさ。」とは彼女の言葉であります。
それでは悪いと言うのですが、年長者の言葉は聞くものだと、私はひとり暖簾を押すばかり。
しかし、先程は不意の出来事で折れたばかりですから、ここは引く訳にはいかないのです。
『幸運とは享受するばかりではいけないものだ』とは母の教えであり、口癖の様に何度も何度も繰り返し私に言い聞かせていた言葉であります。
ならばせめてもと、私はコンビニで買ったガムを取り出しました。
「これはガムかい? こんなハイカラなものは、久々だよ。」
お嬢ちゃんも強情だねと、人懐っこい笑みを浮かべながらお婆さんは言いました。
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