43: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:49:54.23 ID:5XV/thQ7o
「こんな話をするために呼んだんじゃなかったんだよ。えーと、確かこの辺りに――。」
ふぅと息を吐いた彼女は、がさがさと何やらカウンターの下を漁り始めました。
どこにそんなスペースがあったのか、石膏像やら木彫の熊やらが引っ張り出されては水晶球の隣に並び始めます。
ボウリングのピンがカウンターの端に置かれた所で、漸く老婆は「あった。あった。」と身を起こしました。
彼女の手には醤油受けがあり、その上にちょこんとヘアピンがのっています。
「これは……猫?」
ヘアピンには、黒い猫のデフォルメされた顔があしらわれていました。
「そう、黒猫のヘアピンだよ。お嬢ちゃんに猫のご加護がありますようにとね。」
「黒猫のご加護ですか?」
「何だい? 不吉だとでも思ったかい?」
こちらを見透かしたように老婆は口元を大きく吊り上げます。
「そんな迷信を信じてるようじゃ駄目さね。縁起が悪いとすると同じくらいに縁起が良いものともされてるんだよ。
特にこの国じゃあ良いものされることの方が多いくらいさ。黒猫が不吉だなんて、外から入ってきた風習だ。」
締めくくりに、「黒い招き猫を見たことはないかい?」と彼女は問いかけました。
「そういえば、確かに見たことはあります。」
「だろう? アレは厄祓いの意味合いがあるんだよ。日本だと黒猫は、結核や色恋にもご利益があるとされていたのさ。」
143Res/91.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。