21:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2013/09/04(水) 23:19:18.02 ID:I2yqYOzuo
そして城の奥に進もうとするが。
「そーら、倍返しだ!」
その声に咄嗟に身を投げ出す。
一瞬前まで勇者がいた空間を幾条もの光線が貫く。
「ほう、あれを躱すか。いや、そうでなくてはな」
ククク、と笑う魔物に今度は火球が投げつけられる。その色は青白く、通常使われる火球よりも威力は数段上である。のだが……。
「ほう、器用なことよな」
そう言いながらもその火球を避けようともしない。そして炎に包まれるのも一瞬。そして。
「無駄なことよ……」
魔物の手から白く熱された火球が生じ、勇者を襲う。
「くぅ!」
勇者は渾身の力で魔法障壁を展開。辛うじてその軌道を逸らす。
「いい貌だな?勇者よ。とても、とても憎々しげで……実に惨めだぞ?」
ぎり、と歯ぎしりする勇者を傲然と見下ろして魔道元帥は勝利を確信する。そう、彼は自らに放たれた魔力を蓄え、その威力を倍にして返すという特性を持っていた。
「ふ、ざけるなぁ!」
冷たく輝く光が勇者の手元に生まれる。絶対零度のそれはダイヤモンドダストを巻き起こしながら魔道元帥を襲うのだが。
「なんとも器用なことよ。そして哀れと言わざるをえないな」
難なくそれを体内に取り込んで、反撃する。
「くっ!」
絶対零度の嵐が勇者を襲う。先ほどよりも更に強力な魔力障壁で直撃を避けるも、副産物である気温の急低下に体表面の水分が凍りついていく。
「か……、はっ!」
呼吸するだけで呼吸器に、内臓が凍りついていく。小さな火球をノーモーションで幾つも破裂させて周囲の気温をなんとか上昇させる。
「めんどくさい……」
ぼそりと勇者は吐き捨てる。
「なんだ、もう負け惜しみか?なに、焦ることはない。じわじわと嬲り殺しにしてやろうほどに」
ニヤ、と口を歪める魔道元帥に膨大な魔力が叩きつけられる。
「ふむ。無属性の魔力か。それでこれほどの出力……。人としておくにはもったいないな?
どうだ?魔王様に降らんかね。悪いようにはせんよ」
ククク、と嘲笑う魔道元帥に勇者は応える。
「お断り、だね。私は王子君のために生きて王子君のために死ぬ。お前ら薄汚い魔物なんかの誘いなんかに乗らない……」
「そう言うがな、ここまでの魔力を放つことのできる魔物なぞ魔王軍を見渡してもおらんよ。
なに、お前の懸想している王子とやらは助けてやろうではないか。その上で貴様の専属の奴隷とすればよかろうほどに。所詮身分違い。結ばれることなぞ叶わんだろう?」
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