過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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166: ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2013/10/14(月) 16:44:35.38 ID:KtVeTAu2o

『僕の知識では君の不調の原因を突き止めることができなかった。未だ、根本的な問題は除かれていないんだろう?』

少女の細い頤は小さく頷いた。

『何が必要だい?僕に用意できるものはあるかな。』

寂しげに彼女は首を振った。こういう動作が最近頓に女性らしくなってきたと思う。少女らしいというのではない、もっと大人びた女性らしさだ。幼い少女を保護しながら母親のように振る舞う生活をしているというのも一因だろうが、それでもそういった女性的な面を自分に見せることはなかったと思う。それは彼女が守りたいと願う少女たちだけに向けられていた筈だ―こういう雰囲気がふと何気ない瞬間に漏れるようになったのは、やはり彼が現れてからだと思う。

『君は解決方法に心あたりがあるのかい?』

彼女は頷きも、首を振りもしなかった。確信はないが、何となく見当がついているというところだろうか。自分にはどうすることもできず、だが彼女は何となく解決の糸口を掴んでいるということならば、或いは科学とは別の理論を持つ世界に関わることなのかと思ったが、医者はそれについては訊ねなかった。

『…とにかく様子を見るために3日ほど入院してもらうから。大人しくしていてくれよ?』

彼女は申し訳なさそう少しだけ眉を下げて頷いた。ただイエスノーしか返さない非協力的な患者に対して、それでも協力を惜しまないと言ってくれる医者への感謝を、彼女なりに示しているのだと理解していたから、医者は彼女の髪をそっと撫でてやった。

『どうしようもなくなったら、僕には弱音を吐いていいから。』

唇だけで呟いた言葉は彼女には伝わった筈だ。それを受け入れるかどうかは彼女の自由だけれども。
患者が大切な家族のため、少年のため、何の問題もない振りをして過ごしたいと願うなら、それに協力を惜しまないのも自分の仕事である。勿論、彼女を救うための働きを止めないことが前提であるけれども。



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