過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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287:ゆりこと! ◆f49vv9aGc0Fq[sage saga]
2013/11/23(土) 19:33:26.63 ID:ewhGGVAZo

気儘に歩く猫を捕まえたところ、意外なことに逃げようとはせず、少女の胸にぽすりと落ち着いた。その様子を少年に見せびらかそうと思って元いた場所に戻ってきてみたら、彼の姿は見えなくなっていた。自分のことを探す為にどこへか行ってしまったのだろうか。

「どォしよ……。」

こういうときに無闇矢鱈と歩き回ってはいけない。お互いが歩き回っては会えるものも会えなくなるというものだ。相手が通りそうな場所の目星をつけて、そこで待ち続ける方が余程会える確率が高い。彼は性格上、自分を探して回ってくれるだろうし、尚更自分は動かない方がいい―幼い子供ながら賢い彼女はそう結論づけた。
開放的な空間というならともかく、学生寮の出入口などそもそも数が限られている。彼女は自分たちが入ってきた入口の近くに頃合いのベンチを見付けて、そこで待つことにした。

「こんなところで子供一人でどうした?」

少年を待っている間、見知らぬ男性に声を掛けられた。日本人離れした大男で、こういう言い方はよくないのかもしれないが、それこそゴリラだとか類人猿だとか、一般的な現代人とは一種別の生き物であるような印象がある。その割には口調は淡々としていて、いっそ陰気にすら聞こえた。

「ひとをまってるンだ。」

「一人じゃ危ないだろう。この辺りに住むのは高校生ばかりだ、スキルアウトとは行かないまでも質の悪い奴もいる。」

「おれ、ちゃンとつよいもン。」

「それはよく知っている。」

男はコピー機が淡々と印刷物を吐き出すように、天気のいい昼間には似つかわしくないぼそぼそとした答える。野生の獣のように大きな体をしているのに、不思議と本当に目の前にいるのか分からなくなるような瞬間があって、少女は目を瞬いた。



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