過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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326:ゆりこと! ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2013/12/22(日) 15:35:30.09 ID:OT0ddIcHo

「あの魔術には怪我や障害を回復するような効果はない。当然彼女の脳の損傷もそのまま保たれていた筈だ。」

アレイスターから何の相槌も得られないことを理解しながらエイワスは続ける。

「しかし幼くなった彼女は現在の彼女と脳の構造が違うのだから、妹達の補助演算を受けることはできない。そもそも、電極を装着すること自体が難しかったようだが。」

「損傷を受けた脳で、且つ補助演算なしという状態で生き残るために、本能的に記憶を切り捨てたのだろうな。それでも第七位のことを覚えていたというのだから、涙ぐましいことだ。」

本来は脳の一部に損傷を受けたのであれば、他の部分が健在であったとしてもその部位の機能を脳の別の部位で肩代わりすることはできない。脳の機能というのはそれぞれの部位でかなり細分化しているためだ。
逆に軽度の障害が切っ掛けで、普通の人間は持たないような能力を持つことになった人間というのも存在する。この場合、彼女の不完全な脳が魔術を受けたショックで新たな機能を獲得したということなのだろう。元に戻ったときにはリセットされているだろうし、再び同じ魔術にかかったとして同じ現象が起こるとも限らない。

「欠けた脳でそれでも従前の機能を果たそうとしたせいか、能力も精神面も随分幼くなってしまったようだが。」

一部が欠けた機械で、これまで通りの複数の役割を果たそうとしたら、それぞれの役割の質は当然下がるだろう。結果、本来の彼女とは似ても似つかない小動物的な別の人格を獲得するに至った。荒っぽい口調やどこか傲慢な性格は健在であったから、まるで別物というわけでもないのだろうが。

「……障害に加えて、最終信号のことも無意識下では覚えていたのだろう。あの性格は彼女に近い。」

エイワスの推理にアレイスターが口を挟んだ。
明るく朗らかな打ち止めは一方通行にとって大切な存在であると同時に、一種憧れを抱く対象でもある。打ち止めのようにいるだけで周りを幸せにするような存在になりたかった、という願望も彼女は抱えていて、だけれど臍曲りな性格がその願望を隠させていた。今回、精神が幼くなった拍子にそういった隠れた願望が表に現れ、どこか打ち止めに似た振る舞いを見せたのだろう。

「何だ、君も興味ない振りをして案外気にしているものだな。」

エイワスはからかうように言った。それは普通の人間には淡々とした声音にも聞こえただろうが。

「………。」

そして結局、アレイスターが再びこの話題を口にすることはなかった。



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