過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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528: ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2014/03/16(日) 16:17:09.56 ID:7SwgI+zoo

「、は?」

彼女は形の良い細い眉をぎゅうと寄せて、怒っているのか、不満に思っているのか、とにかくいい感情は持っていないとはっきり分かる表情を見せた。

「オ、マエ、俺を追い出したいってか、」

明確な表現ではないものの、母親のように慕う女教師の口から出た拒絶にも似た言葉に、息を詰まらせながら彼女は答える。親に捨てられる瞬間の子どもとは、こんなものなのだろうか、とどこか冷静に彼女の様子を伺っていた女教師は、そんなことはないんだと抱き締めてやりたい衝動にかられていた。
彼女は以前から一方通行に対して母親のように振る舞っていながら、時折突き放すような瞬間もあった―本当に、「時折」であったけれど。本当の血縁でもない、長い付き合いがあるわけでもない自分にできることの範囲をはっきりと線引していた。優しい彼女は目一杯甘やかしてやりたい一方で、それが彼女のためになるとも限らないことを理解していた。
もはや理解してくれる友人を複数得られた今、賢い彼女には自分のような「保護者」が必ず必要ではないことも弁えていた。この愛らしい娘から、自分から離れていく覚悟を既に決めていた。

「勿論、違うじゃんよ。」

「もともとこの街の子供は学生寮で一人暮らしか、精々同年代の子供と同室の寮生活が基本だ。こんな風に年代の違う人間が寄り集まって暮らすことの方がよっぽど珍しい。」

「この家にあんたを住まわせてたのは、トラブルに巻き込まれがちなあんたを守るのと同時に、人と助け合うことを覚えて欲しかったからじゃんよ。」

能力が万全であった頃にすら、スキルアウトたちの小競り合いに巻き込まれたり、腕試しのつもりの不良に絡まれたりすることは珍しくなかった。彼女が体を壊した前後は特に酷く、幾ら妹達の支えがあったとしても嘗ての住まいではまともに生活することはできなかっただろう。
だから不本意ながらも彼女は黄泉川との同居を受け入れたし、家主がそれ以上のことを考えて自分を家に招き入れたなどという可能性には考えが及ぶことはなかった。



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