過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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530: ◆owZqfINQN1ia[sage saga]
2014/03/16(日) 16:19:38.10 ID:7SwgI+zoo



「オマエ何やってンの?」

「天井のタイル数えてる。体動かないから、やることなくって。」

家主に告げられた言葉と自分の気持ちに折り合いをつけることができなくて、ぼんやりと、それこそ今だったならスキルアウトに隙を見せたかもしれないと思うほどに呆然としながら、病院に戻ってきた。
「戻ってきた」―奇妙な言葉だ。結局自分は、どこが戻るべき先なのか、未だによく分かっていない。結局、あの女教師が言うように、いつかあの部屋を立ち去るべきなのだろうと、初めから心のどこかで折り合いをつけていた自分自身に気が付く。戻るべき場所はあのマンションではないし、この病室でもないし、況してや障害を負って以来必要最低限の荷物を取りに行くことしかしていない嘗て住んでいた学生寮でもない。
そんなもやもやした感情は、指先を動かすことすら難しい少年が天井を親の敵でも睨みつけるように険しい顔で見詰めていたことで、どこかに吹っ飛んでいってしまった。自分も大概無愛想だと言われるが、何かに熱中しているときの彼も普段の人当たりの良さなどどこかに行ってしまったように気難しい表情を見せる。

「具合はどォだ。」

「自分では体が全然動かないから治ってる気はしないんだけど、冥土返しはまるで逆のこと言ってた。体が治す方に集中しているから、動かす方にエネルギーを回してないらしい。」

「直ぐに、家の中歩くくらいなら難しくなくなるって言ってたから、そうしたら退院させてもらおうと思う。」

そうしたら、と言うよりかは、今直ぐにでもそうしたいのだと誰の目にも分かる表情で少年は言った。少年のそういった子供っぽさ、あどけなさを笑うように、彼女はベッド脇、もはや定位置となってしまったパイプ椅子に座ってはァ、と溜息を吐く。



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