過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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34: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/09/24(火) 21:40:59.75 ID:q9z5J92ho

 「こちら、バッハ機。各機、状況を知らせよ」

中尉の声が無線越しに聞こえる。

「こちら、オーランド曹長。異常ありません」

「ウリエラです。こちらも問題なし」

俺が返答したのに続いて、ウリエラの無線も入ってきた。

「こちらエリック・デックス。やっと宇宙にも慣れてきました」

次いで、エリックの、緊張とも安心とも取れる声色の無線が聞こえる。

「了解。何事もないと思うけど…気を緩めないで」

中尉はそういって、先導してこの宙域を進んで行く。俺たちも遅れないよう、慎重に彼女の後ろについていった。

 俺たちは訓練の一環で、サイド3の周辺宙域の哨戒活動を任されていた。先日の、訓練地域への敵の偵察のこともあって、本国も危機感を抱いているらしい。もちろん、この任務についているのは俺たち学徒訓練兵ばかりではなく、サイド3防衛軍の本隊からも出ている。俺たちは敵を発見したら、位置情報を発信するだけでいい。

しかも、今日は2個小隊を1ユニットとして作戦行動をとっている。万が一敵に鉢合わせしても、数の利はこっちが有利か、イーブンくらいにはなるだろう。

 部隊長たちが戦死して、部隊内の編成がわずかに変更された。新しく部隊長に任命されたのが、イレーナ中尉。俺とエリックはそのまま、イレーナ中尉の率いる小隊に残り、そこにウリエラが引き取られる形で配属された。

ウリエラを守らなければならない俺にとっては、好都合だった。どこかよその部隊で戦闘に参加されるより、同じ部隊でくっ付いていてやったほうが、守りやすいし、安心だ。

 「こちら、ケイス隊。イレーナ隊長、防衛軍からの出張連中が、B3エリアの確認漏れだそうです」

無線から別の声が聞こえてきた。うちの隊と一緒になって哨戒を行っている小隊の隊長、ケイス・フォスター中尉だ。

「了解です、ケイス。まったく、地元でしょうに、どうして抜けがでるのかしら」

中尉はため息混じりにそんなことを言ってから

「進路を変えるわ。ポイント340に合わせて。このまま、X45、Y60へ進路変更」

と指示を出してきた。コンピュータのモニタで座標を確認して、無重力に影響されない汎用絶対水平器を見ながら、モビルスーツの軌道を修正して行く。

 「コンラッド、ついて来てるか?」

ケイス隊に所属するキリの声が聞こえた。

「なんとか。キリは器用でうらやましいよ」

さらに別の声。彼も、ケイス隊に所属するパイロットで、コンラッド・イステル。エリックと同じく、操縦はあまり上手くはないが、それでもなんとかなってはいる。

「ははは。褒めるなって、照れるだろう?」

キリは、操縦に関しては学徒兵の中でも、俺たち研究所出身の連中を除いたら、トップクラスの成績だ。戦闘機動はまだ未修得だろうが、それでも、コロニーやなんかを修理するリペア隊の操縦よりは様になっている。

 「無駄口を叩くな、じき、B3エリアだ。バーニアの噴射を抑えて、目を凝らせよ」

ケイス隊長が指示を出す。俺もそれを聞いて、感覚を研ぎ澄ませた。でも、別になんのことはない。これといって、なにかの気配があるわけでもなかった。

 俺たちはその宙域をぐるりと一周して、もとのコースへと戻る。この先は、サイド2があった位置に程近い暗礁空域になる。ジオンも連邦も、近寄りたがらない危険区域だから、俺たちの哨戒飛行はこのあたりまで。あとは、引き返して何事もなく訓練場の港へとたどり着けるはずだ。

「異常なし、ね。各機、方位100へ。港に戻るわよ」

中尉の声が聞こえた。ふぅ、と思わずため息が出た。

 しかし、そのとき、なにかが感覚に触れた。これは…?俺は、あわてて緩ませた感覚をまた集中させる。これは、べっとりとした粘っこい感覚…敵意、だ。位置は…下方か!?

「中尉!下方!敵機と思しき反応あり!」

「数は!?」

「おそらく、三つ!」

俺は報告しながら機体を傾かせる。下方には、小さなデブリが浮いている。あれの裏に隠れてるのか…?

「ケイス、本隊に連絡をお願いします。バッハ隊各機は、戦闘態勢で待機。撃ち落す必要はないわ。ここで待機して、監視を続けましょう。味方の増援が来るまで、やつらを逃がさなければ、問題ないからね」

中尉は、落ち着いた様子で指示を出してくる。内心、ハラハラしているのが伝わってくるが、こんな声色なのは、俺たちを焦らせないため、落ち着かせるため。この人のやり方は、良く分かってきていた。

 


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