過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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◆tK49UmHkqg
[saga]
2013/09/28(土) 14:14:34.16 ID:fBCgfWSeo
「はい、中尉」
<個別通信だから、畏まらなくっていいわよ>
おどけようとしている口調ではあるが、いまいち不安が隠しきれていない。
「そうは言われましても、中尉。上官に対しては、相応の接し方があると心得ておりますので…」
<もう、かわいくないよ、そう言うの>
イレーナのふてくされる声が聞こえてくる。少しは、気を紛らわせてやれただろうか。
「はは、悪い。で、なにか用事が?」
<約束、覚えてるわよね?>
俺が聞くと彼女は、穏やかな口調で俺にそう聞いて来た。
「あぁ、覚えてる」
忘れるわけはない。あんな経験も含めて、だ。
「戦争が終わったら、地球にでも逃げよう。宇宙じゃどのみち、追われる身だ」
<そうね…ウリエラも連れて、地球で暮らす…楽しそうね>
イレーナの無邪気な声が聞こえてきた。大丈夫そうだ。
<地球でね、行方不明になった友達がいるの>
イレーナは急にそんな話を始めた。
<私のあとから、士官学校に入ってきた人で、ちゃんとハイスクールも出てるから、少し歳は上の人だったんだけど…優しくて、いい人だった。私、彼女が地球降下作戦に参加するときに、彼女の部隊の護衛についていたわ。無事に降下して、活躍してたみたいなんだけど、ジャブロー降下作戦以降、音信不通でね。死んじゃっているかもしれないけど、地球に行ったら、その友達を探したりしてみたいかなって、思ってたの>
「そうか…無事だと良いな、その人も」
俺はそうとだけ答えてやった。イレーナは、その友達についてさえ、悔いているのかもしれないと感じた。地球降下後、ジャブロー攻略作戦なんてずいぶん期間があったし、イレーナが直接関係ないことくらいは明白だが、それでも、彼女は、その友達ってのを守ってやりたかったんだろう。きっと、俺たちと生きてここを切り抜けられれば、あるいは、過去の苦しみからイレーナは一歩踏み出せるかもしれないんだ。
そんな微かな希望の光が生まれればもしかしたら、おそらくもう死んでしまっているだろうその友達も無事かもしれない、と思えるってことを、彼女は感じてるんだ。
そうだ。俺は俺自身のためにも、ウリエラのためにも、そして、イレーナと、イレーナの過去のためにも未来のためにも、こんなところで死ぬわけには行かないんだ。
<学徒MS隊、聞け>
不意にそんな無線が聞こえた。これは、基地の管制室か?
<こちらは、貴隊の管制を行う、サムエル・ジョーンズ大尉だ。貴君らの勇姿には、こちらも目がくらむ思いだ。間もなく、出撃命令が出る。祖国のために、ここで連邦を撃破せねばならない。諸君らの健闘に期待する>
こんなところまで来て、そう言う良い方での士気高揚か。いけ好かない。だがもっといけ好かないのは、こんなのに乗ってしまう隊員が少なくないことだ。無線の中で、バカの連中が威勢よく返事をしている。良いように乗せられているだけ、と思えば、目を覚まさせてやりたいとも思うし、守ってやりたいとも思う。
だが、現実的にはそんなこと、今の状態では不可能だ。頼むから、戦場を混乱させるようなことだけはしないで欲しい。そうすればお互い、生き残れる可能性があがるだろう。特攻とか、無茶なことだけは、くれぐれもしてくれるなよ…
俺は心の中で祈る他はなかった。
ケージハッチが、警報音とともに開いて行く。やがて音は聞こえなくなり、赤色灯だけがグルグルと回転しているようになる。
<よし、では、出撃シーケンスに入る。第1小隊、カタパルトへ移動せよ>
管制塔から指示が聞こえてきた。俺はモビルスーツを射出カタパルト場へと移動させる。
「こちらオーランド機。カタパルトへの搭乗完了」
<こちらウリエラ。こちらも大丈夫!>
<了解、二人とも。エリック、そっちはどう?>
<済みました!>
<了解。こちら第1小隊、バッハ隊。管制塔へ、準備完了しました!>
中尉が管制塔にそう報告した。
<了解した、第1小隊。射出する!>
<第1小隊、出撃します!>
中尉の合図とともに、カタパルトが加速して、機体が宇宙に放り出された。前方にはすでに、火線が飛び交っているのが見える。戦闘だ…俺は息を飲んで、レバーを握りなおした。
イレーナも、ウリエラも、死なせはしない…死なせるもんか!俺はそう、自分に言い聞かせながら、固く胸の内に誓った。
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