過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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9:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/15(日) 02:33:22.68 ID:rUu3+dw5o

 翌日から、コロニー内でのモビルスーツの訓練が始まった。俺の隊は、イレーナ隊長と俺に、学徒兵のエリック・デックス伍長の三人。研究所から一緒にここへ連れてこられた連中も、一緒になっての合同演習だ。

昨日あれだけ不安げにしていたウリエラも、一緒だってことに安心しているのか、研究所でやってたようになれた様子でモビルスーツを動かしている。

 「うっ…うわっ!」

エリックのうめき声が無線越しに聞こえてくる。

「エリック、ゆっくりでいいわよ。まずは、歩くことから。バランスは自立制御されているから、怖がらなくて大丈夫」

イレーナ中尉の優しい声が聞こえてくる。この程度の訓練、退屈には違いないが、だからと言って手を抜くわけにもいかない。だた歩くだけに、手の抜き様もあったものではないのだが…

 俺たちはその日半日を掛けて、コロニーの中を往復し訓練を終えた。その晩、営舎の食堂で夕飯があると言うので、俺はシャワーを済ませて、食堂へと出て行った。

「あ、アレックス!」

俺を呼ぶ声がした。呼んだのは、すでにテーブルについていたウリエラだった。

「元気そうだな」

訓練のときは声を掛けられなかったので、改めてそう言ってやる。ウリエラは

「うん、心配してくれてありがとう。隊長が良い人で、いろいろ面倒を見てもらってるよ」

と笑顔を見せた。元気でやっているんなら、それでいい。

「そっちの部隊、もう一人はどうなんだ?」

訓練のとき、ウリエラの部隊は、比較的スムーズに移動が行えていた。こっちのエリックよりも、慣れの早いパイロットがいるらしい。

「あー、オスカーさんね。彼は、落ち着いてる人、かな。操縦の飲み込みも早かったよ」

「へぇ。まぁ、お前の盾になってくれそうなやつなら良いんだけどな」

「私はそんなヘマしないから、大丈夫」

「良く言う。昨日は半分泣いてやがったくせに」

俺がそう言ってやったら、ウリエラは言い返してくる言葉がなかったようで、代わりに頬を膨らませて俺の肩を平手でたたいて来た。研究所にいた頃にも同じようなやりとりを何度もしたな、と言うのを思い出して、ひとりでに笑いが漏れた。

 「お、いたいた、アレックス」

声を掛けて、わざわざ俺のところにやってきたのは、エリックだった。エリックは俺の隣に座ると、なぜだか仰々しく

「今日は、すまなかったな…脚を引っ張ちまって。もう少し、ちゃんとマニュアル読み込んでおくから、今日のところは許してくれ」

と謝ってきた。別に、どうも思ってなんかいない。あれくらいで当然だ。むしろ、学徒動員でもモビルスーツ部隊に配備されているくらいだ、それなりに適正があったんだろう。そうでもなきゃ、姿勢制御が効いていたって、転倒で全身打撲になり死んでたって不思議ではないんだ。

「気にするな。最初は誰だって、うまくはいかないものだ」

俺が言ってやると、エリックは安心したように、表情を緩めた。エリックとは同室だし、わざわざ関係をこじらすもの面倒だ。それに、特段悪いやつとも思えない。モビルスーツの操縦に関していえば不器用な奴だが、こうして話している分には、気の利く、いいやつだ。


「そっちの女の子とは知り合いなのか?」

「あぁ、紹介するよ…同郷の、ウリエラだ」

研究所の出身、だなんて言ってしまうといろいろと問題があるが、これなら構わないだろう。

「ウリエラです。エリックさん、だったっけ?」

「さん、なんてよしてくれ。同じ釜を食う仲間だ。適当で構わないよ」

エリックとウリエラが言葉を交わすのを聞きながら、俺は食堂を見回していた。

 総勢、20人ほどがいるだろうか。そのうち、研究所から来たのは俺たち5人。学徒動員でここに連れてこられたのは、15人、ってことになる。二人一組にして、その上に経験のある小隊長が乗っかるわけだから、10小隊が出来上がるってことか。第1学徒MS部隊、ね。今日の訓練の様子じゃ、どう考えても、無事じゃすまない。この中で、運が良くても4、5人が生き残れば上出来だろう。

俺は、せめてウリエラくらいは守ってやって、その枠に入り込めさえすればいい。戦う訓練は積んできたし、連邦は敵だ、と教育もされてきた。だが、生き死にの話は別問題だ。誰に何を言われようが、ジオンだかっていう、縁もゆかりもないもののために命を捧げるほど、ストイックになってやるつもりはない。
 


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