過去ログ - モバP「光」
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9:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/21(土) 02:00:31.04 ID:8ucU1b060
 それから約一年。俺はアイドル事務所、CGプロダクションのプロデューサーとなって社会の荒海に漕ぎ出していた。
 ヒーローを作りたいなどという抽象的な、子供じみた動機のもとで就職活動を始めた当時の俺も随分なあほであるが、それらの妄言を全て聞き入れた上で俺なんかを採用した代表もかなりのものである。
 でもあの日以来俺の心にはいつも小さな光が灯っていて、俺は善も悪もない社会においてその光を絶やしたくなかったし、代表がそんな俺の話を理解してくれたことが嬉しかった。
 俺はこの仕事で飯を食うのだ。

「キャーッ! たーすーけーてー!」

 ステージの上では長年の宿敵、ショウテンガイを屠ったデフレスパイラルによって、俺の担当アイドル本田未央が羽交い絞めにされていた。
 未央は必要以上にくねくねしていた。まったくもってなんちゅう演技をしているのであろうか。後で一遍、説教したらなあかん。

「ふははは、俺はこの小娘を懲らしめてやるぞ」

「……ふふっ。や、やっておしまい、デフレスパイラル!」

 悪の女幹部リンリンを演ずるうちのアイドル渋谷凛が、あいかわらず盆暗のデフレスパイラルをけしかけた。
 普段は何事もそつなくこなすはずの凛が、この日に限って薄く笑った上に台詞がつっかえたのは、おそらく未央の熱演のせいである。

「たいへーん! みんな、ヒーローの出番だよーっ! せーのっ!」

 司会進行の島村卯月もうちのアイドルであるが、感性が常人とはやや異なるため些細なことには動じない。
 席を埋め尽くす観客に埋もれぬよう、俺はあらんかぎりの大声でヒーローの名を呼んだ。

「ヒカルー!!! 助けてぇー!!!」

 瞬間、ステージに小さな光が現れて、それは嘘くさく、わざとらしいほどに輝いた。
 俺はそれを美しいと思っていた。



ザ・おわり



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