過去ログ - 盲目幼女「お腹が空いてるの?」狼「気にするな、もうすぐご馳走にありつける」
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2013/09/23(月) 22:24:55.46 ID:Z+ZcL0Ap0
それから再び、一人と一頭は歩き出した。
娘が、杖を手放し倒れ込むと、オオカミが娘を背負って歩いた。
たらふく喰ってきたなど、嘘だろう。
あのパンも、最後の食料だったに違いない。
背中の娘が、狼に捕まりながら呻いた。
幼女 「……オカ、さん」
オオカミ「何だ」
幼女 「ありがと、う」
オオカミ「礼を言うくらいなら、もっと気の利いた物をよこせ。そうだな、パンが良い。お前の命を繋ぐあのパンを、森を出たら、俺にも、しょっちゅう持ってこい」
本当はあんなまずい物が喰いたいわけじゃない。
だが少女が他に、何を食べたことがあるのか、オオカミは知らなかった。
そして一歩、一歩を歩くごとに、体が軋んでいくのが解る。
幼女 「もう、もう良いよ、オカさん。私を食べて。これ以上はもう、貴方自身の体が」
オオカミ「俺を誰だと思っている。俺は恐ろしい人食いオオカミだ。お前なんぞの痩せぽっちを担いだ所で、鳥の羽を体に身につけるのと、さほど変わらん」
オオカミは焦った。
自分の体力以上に、段々と少女の命が尽きかけているのが、背中越しに伝わるからだ。
オオカミは昼夜を問わず、少女を背に載せて走り続けた。
既に自分も空腹と疲労で限界に近い。吹き飛ばされた右耳を中心に、満身創痍だった。
だがそれ以上に彼を動かすのは、捕食者の誇りと、命を冒涜する人族への憤りだ。
オオカミにとって命とは繋ぐ物。
それ以外の理由で奪い取るなんぞ、例え相手が神であったとしても、決して許されない。
それがオオカミのオオカミたる誇りであった。
そしてついに、森の端が見えてくる。
あまり、この辺りまで来たことは無いが、この先には、確か人里があったはずだ。
森を抜けて、その近くでこの娘を捨てれば、運が良ければ生き残れるだろう。
オオカミ「見ろ、あれが出口だ! 今、あそこから再び、お前の命は産声を上げる!」
光り輝く森の切れ目が迫ってくると、オオカミは雄叫びのように吠えた。
だが度重なる疲労と空腹と、何よりも片耳を失い、そっちから聞こえていたはずの気配を聞き逃した。
ズドンと、遠くで火薬が吼えた。
狼がこめかみに激痛を感じたか否か、少女を背負った巨体が急に失速し、少女の体を宙に投げ出して動かなくなる。
狼は、もう二度と動かなかった。
それから猟師によって呪いの森から救出された少女は、猟師がその日に仕留めた獲物のスープを食べて、命を繋いだ。
よっぽど腹が空いていたのか、その娘は泣きながらスープを平らげた。
そして、かつて少女だった女は猟師との間に子を成して、その子孫達は、狼を象った祠に、毎日パンを捧げ続けた。
おしまい。
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