過去ログ - 『「雨だ……」』
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834: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:49:11.80 ID:25c1NsJp0
《お前がこのノートを発見したという事は、メビウスが洞窟から姿を消していることに気付いたはずだ。だが勘違いしないでくれ、彼は決してお前を見捨てたわけではない、むしろお前を助けるために今もなお苦しみに喘いでいる。》

《メビウスが洞窟から姿を消す直前、私はこの国の上層部に恫喝されていた。》

《国王を救うため不老不死になる方法を教えるか、少女の身を引き渡すかどちらを選ぶかと。》
以下略



835: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:50:23.46 ID:25c1NsJp0
《ならば少女の身代わりに私がなろうと考えた、だがそれも無理だった。何故ならメビウスはお前に飲まして以来私に決して血を譲ろうとしなかったのだ。そのため私が不老不死になりこの身を捧げることは適わなかった。》

《少女を奴らに引き渡さないためには不老不死になる方法を教えるしかない。しかしそれはメビウスの存在を奴らに漏らすことと同義だった。人間である少女ですら解剖にかけようとしている奴らに竜などという余りに魅力的な研究対象を知られてしまったらメビウスがどんな恐ろしい目に合うかは想像に難くなかった。》

《私はこれまでの人生の中でかつてないほど悩んだ、少女とメビウス両方を救うにはどうすればいいか。しかしそれらを考えるには余りに時間が短すぎた、なにしろ恫喝された次の日までに答えを出さなければ強制的に少女を連れて行くと言われていたのだ。冷静な判断を行う時間を奪われた私はいつしか愚かにも、"どちらも救うにはどうすればいいか?"ではなく"どちらを救うべきか?"という愚問に取り付かれてしまった。》
以下略



836: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:51:32.31 ID:25c1NsJp0
《今現在彼はとある街の研究所に幽閉されている。そこでどんな非人道的な実験が行われているかについてはここでは記さない、彼も知られたくないだろう。》

《ただ彼はその実験を受け続ける苦痛から私達のために決して逃げ出さずただひたすらに耐え続けるのだろう。だから、誰かが、彼を救わねばならない。》

《彼を救う責任が誰にあるかは語るまでもないだろう。》
以下略



837: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:52:31.25 ID:25c1NsJp0
《ここで少し話を変える。》

《ここ最近私が家を空けることが多かった理由は、とある兵器の開発に勤しんでいたからだ。その兵器とは端的に言えば爆弾のことだ。》

《何故私がそんなものを作っていたかについては後で触れることにして……この爆弾だが既存の爆弾にはない新物質が火薬として使われている。その新物質とは、》
以下略



838: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:53:17.65 ID:25c1NsJp0
《私の目的……それはやはりメビウスを救出することだ。問題はどう救い出すかだが、メビウスが囚われている研究所は監視が厳しく彼の元に近づくこともできないのが現状だ。だから、》

《研究所の周囲一帯をこの爆弾を使い吹き飛ばす。結果研究所は跡形もなくなるだろう。勿論中にいる人間も全員死ぬ、メビウスも死ぬだろう。》

《しかしメビウスは"生き返る"ことができる。……ああ自分でも最低なことを言っているのはわかっている、わかっているが奴を一秒でも早く地獄から救い出すにはこの方法しかないのだ。》
以下略



839: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:53:58.97 ID:25c1NsJp0
《聡明なメビウスなら自分が死んだ理由を察するだろう。転生した後はすぐにお前を迎えに行くはずだ。》

《彼なら私の代わりに必ずお前を守ってくれる。だから、どんなに今が苦しくてもメビウスと共に生きてくれ。生きて幸せになってくれ、それだけが私に残された最後の希望だ。》


840: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:54:59.36 ID:25c1NsJp0
《爆破の準備が完了するまでの数週間、私はこの町でもなくメビウスの捕らわれている研究所のある街でもない誰にも知られていない場所に潜伏している。だからこのノートを読み、これから私が為そうとしていることを知ったお前でも私を止められない。ただ然るべき時が訪れるのを待っていてくれ。》

《では潜伏する前にこのノートを発火装置と共に洞窟に隠しておく。ああ、そうだ、最後に愛しい我が娘の顔を見るぐらいは許してくれ。お前が眠っている間に訪れるからお前は気付いていないだろうがな。》

《他に何か記すことはあっただろうか。いや、むしろ書きたいことがありすぎて筆が止まってしまった。思うに言葉というものは重ねれば重ねるほど曖昧になり伝わらなくなると思う。だから最後はありきたりでシンプルな言葉で締めくくってしまおう。》
以下略



841: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:56:03.71 ID:25c1NsJp0
少女「…………い」

少女「……いやだ、そんなの……ダメだよ」

少女「だってお母さん、メビウスさんと一緒にいるときあんなに幸せそうなんだよ、メビウスさんだって口には出さないけどお母さんのこと大好きなんだよ、それなのに、そんなことしたら…」
以下略



842: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:57:18.63 ID:25c1NsJp0
♪彼女の答えとハッピーエンド

少女「……どうすればいいの、どうしたら皆がこれ以上不幸にならずにすむの…? "どうすればわたしなんかが皆を助けられるの?"」

少女「…あきらめちゃだめだ、希望を捨てちゃダメだ、皆がわたしのなんかために苦しんでるんだ。だったらわたしが救わなきゃいけない…だから」
以下略



843: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/07/21(月) 01:58:12.19 ID:25c1NsJp0
少女「……これじゃない、これじゃない」バサバサ

少女「…あった、この本だ。きっとこの説話集の中に答えがあるはず」ペラペラ

少女「…これは……だめか。これじゃ意味がない。…でも、待って。もしかしたら……」
以下略



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