30: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/22(火) 01:18:31.35 ID:eLT1eDY5o
『ちょっと、社長、一体何を……』
「これとこれ、あとはこれだな……。それと、この資料とこの資料、そっちの資料もだね。ああ、Pくん、そのクリアファイルをこっちへ寄越してくれるかい」
突如始めた奇行のように見えたそれだが、恐ろしいほどに社長の声は冷静で、それでいて理知的だった。何より、資料を探る手つきが酷く手慣れている。
僕は、その気迫に気圧され、手元にあったクリアファイルを社長へと手渡した。彼はそれをひったくるように掴むと、中から書類を手早く取り出し、そしてリストアップするようにクリップへとはさんでいく。
「うむ、いいね。これで出来上がりだ。Pくん、すまないがこの資料をコピーしてきてくれないか? 原本はそのあと、元の場所へ戻しておいてくれ」
『はぁ……。コピーしたものは、どうするのです?』
「ああ、それは君が持っておきたまえ。それと、しっかりと熟読するようにね」
社長はそういって、僕の肩を再び、ばしばしと叩いた。また僕は一瞬息が詰まり、少しばかり咳をする。そうして、その咳が収まるころには、社長は意気揚々と去っていくところだった。
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