103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/10/25(金) 09:53:03.45 ID:yQEbbCPI0
『咲良は、お祖父ちゃんの“葉鳥神道流”が嫌いかな?』
『うん、さくら、ピアノしたりおえかきしたりする方が好き。
だって、たたいたりけったりしたら、された人がいたいでしょ?』
『そうかそうか…それでいい。
咲良、お前は人の痛みをわかってあげられる優しい子でありなさい。
そして――』
「咲良さん…傷…痛みますか…?」
ぼそぼそと低く小さな声で池ノ坊奨(男子四番)が気遣わし気に聞いてきたので、上野原咲良(女子二番)は顔を上げ、できるだけいつもと変わらない笑顔を浮かべられるように表情筋を動かし、奨の小さく鋭い目を見つめた。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう、奨くん」
腕の傷はずきずきと痛み、あまりの痛みに頭痛までしてきた。
しかし、これ以上心配を掛けるわけにはいかない。
ただでさえ教室を出発した時には奨に支えてもらわなければ立ち上がることすらできない状態だったし、今は真壁瑠衣斗(男子十六番)と高須撫子(女子十番)が咲良の腕の怪我を処置し直すために、少し離れた場所にある診療所に必要な物を取りに行ってくれている。
こんなにも皆に迷惑を掛けてしまっていることが本当に情けない。
木戸健太(男子六番)がいない。
城ヶ崎麗(男子十番)がいない。
そのことがこんなにも響くなんて。
本当に心から愛しくてたまらない恋人の健太。
少しぶっきらぼうなところはあるけれど優しくて、とても真っ直ぐで熱くて目標のための努力を惜しまない、男らしくてかっこいい人。
初等部時代のとある出来事の際に初めて健太と出会ったのだが、曲ったことが許せない正義感の強さとどんなことにも怯まない勇ましさに、一目で惹かれた。
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