過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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460: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/01/19(日) 23:28:12.07 ID:Oze1huzB0

「あいたかった、ずっと、」

(俺も、だよ)

思っても、伝わらない。
どうやら声帯は完全に潰されているらしい。
身体は徐々に癒されていくが、今はまだ楽にならない。
指先の一本すら、自分の思うように動かせない。

「トールがいなくても、ずっと頑張ってきた。
 歩いて、走って、すすんで、立ち止まっちゃいけないと、おもって」

(そう、だな。お前はずっと、我慢して―――)

「俺様を捜していたのか。だから『グレムリン』に入ったのか」

(ああ、)

肯定も否定もしてやれない。
ただ、彼女の涙と独白と問いかけだけがこだましている。
胸が痛かった。抱きしめて、頭を撫でてやりたかった。

「俺様のことなんて忘れれば良かったんだ。
 ちょっとした偶然で出会っただけなのに、…」

(…それで片付けられないから、お前は泣いてるんだろ……)

涙で歪んだ顔をぐしゃぐしゃに歪め、彼女は唇を噛み締めた。
後悔している人間の顔に他ならなかった。

「俺様のせいだ」

(ちが、う)

「俺様がお前に頼らなければ、甘えなければ、こんなことにはならなかった」

(そんな、こと、)

「聞いてくれ。…死ぬかもしれないと思った時、お前の顔が浮かんだんだ。
 トールに甘えたいって、抱きついて、なきわめきたいって、…そんなことを」

(そっ、か…)

「あまりにも身勝手で、自分に呆れる。そのせいで、トールはこうなった」

(俺は、ただ…お前に、もう一度会って……)

届かない。
叫んでも、掠れた吐息にしかならない。


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