20: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:50:42.11 ID:vhF1ZYOxo
 リスナー側からは、まるで脳内に直接アイドルが語り掛けてくれているような、自分のためだけに語ってくれているような感覚を受けるのだと云う。 
  
 アイドルファンからすれば、まさに合法ドラッグの如き快感を得られることは容易に理解できよう。 
  
 番組内ではフリートークが進んで行く。 
21: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:51:36.07 ID:vhF1ZYOxo
 このインタラクティブ性は、かつての電波ラジオでは到底無理だった形態だ。 
  
 ――うおおすげえ即興! 改めてシビれる! あこがれるゥ!!―― 
  
 ――凛ちゃん今日もクールかわいい!―― 
22: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:52:48.24 ID:vhF1ZYOxo
  
 その後そつなく番組進行をこなし、送信を終えると、意識は再びチューブの世界へと戻された。 
  
 同時に、ちひろとの会話セッションがオープンする。 
  
23: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:53:16.73 ID:vhF1ZYOxo
 「――明日のお仕事なのだけど、午前に入ってた出版部との打ち合わせが午後へ変更されたの。その影響でCM撮影は夜からになったわ」 
  
 ちひろはそう云って、直前になってごめんね、と謝り、更新されたスケジュールを送ってきた。 
  
 「あ、ううん、わかった。これなら出社は昼過ぎでいいね?」 
24: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:54:00.58 ID:vhF1ZYOxo
 アイドル仲間かつ、最も仲の良い関係にある者の一人、北条加蓮が映し出される。 
  
 凛より若干遅くデビューした、――とは云え今では充分ベテランの――クール系アイドルである。 
  
 その姿形は、凛と同じく、デビュー時からほとんど変わっていない。八千草薫も真っ青だ。 
25: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:54:34.72 ID:vhF1ZYOxo
 NEURONetの恩恵によって勤務時間がかなり柔軟になったので、出社または退社のタイミングが他のアイドルと重なることは殆どなくなってしまった。 
  
 便利ではあるが、少しだけ寂しい気も拭えない。 
  
 久しぶりのことに、凛は形の良い口角を上げ、喜ぶ。 
26: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:55:17.62 ID:vhF1ZYOxo
  
 ―― 
  
 凛が急ぎ足で報告を終わらせ、エントランスへ出ると、加蓮はポートに挿した携帯通信端末で音楽を聴いて待っていた。 
  
27: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:55:44.42 ID:vhF1ZYOxo
 「ちょっとー、凛。ちひろさんに怒られるよ。アタシも人のこと云えないけどさ」 
  
 「加蓮と一緒に退社なんて久しぶりなんだから、多少急いだってちひろさんはそれくらい大目に見てくれるよ」 
  
 あまり悪びれない様子の凛に、つられて苦笑した加蓮が「どこか食べに行かない?」と訊いてくる。 
28: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:56:17.68 ID:vhF1ZYOxo
  
  
 ・・・・・・ 
  
 西新宿、旧青梅街道に面してひっそりと佇むビル。 
29: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:57:16.53 ID:vhF1ZYOxo
 カウンターに通され、メニューを開くと様々な種類の酒が載っている。 
  
 かなり種類は豊富で、しかも通好みのラインナップだ。 
  
 「まずは軽くビール?」 
30: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/10/31(木) 23:57:47.46 ID:vhF1ZYOxo
 「凛はよくそんな苦いの飲めるよね。アタシはホフブロイのミュンヘナーヴァイスで」 
  
 加蓮は凛に不思議そうな顔を向けつつ、マスターにオーダーした。こちらは南ドイツで最も有名な、甘めの小麦ビール。 
  
 凛は片目を瞑って答える。 
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