340: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:49:20.09 ID:cp6WeGbSo
ふぅ、まるで生まれたての仔鹿みたい。
苦笑しつつ、その人に促されて、いくつものケーブルが出ている、大きな機械の前まで連れてこられた。
若い方の人は、その機械から出ているケーブルを、首の後ろに挿している。
341: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:50:46.50 ID:cp6WeGbSo
――ねえ、一体何の会話をしているの?
そんな私の思念が通じたのか、若い人がこちらへ歩み寄ってきた。
でも、その右手は――変なケーブルを持っている。
342: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:51:34.28 ID:cp6WeGbSo
長いチューブと云うべきか、トンネルと云うべきか、変幻自在の筒の中を浮遊しながら進む感覚が身を包む。
なんなの、これ?
未知の感覚。
343: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:52:27.12 ID:cp6WeGbSo
すると、私の意識の中に流れ込んでくる『声』が聞こえた。
――ふーん、アンタが私のクローン? ま、悪くないかな……
ク、ローン……?
344: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:53:02.63 ID:cp6WeGbSo
その『私自身』は、挨拶をするように、片手を挙げて、にこりと笑う。
とても綺麗で、とても可愛くて、そして、――とても不気味な笑み。
あなたは一体誰!?
345: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:53:29.13 ID:cp6WeGbSo
――アンタの母艦―マザーシップ―だよ――
346: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:53:59.74 ID:cp6WeGbSo
私が……クローン?
まさかそんなわけ……冗談にしても性質の悪すぎる話だ。
クローンなんて、羊のドリーくらいしか知らないよ。
347: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:55:44.05 ID:cp6WeGbSo
「まあ、大方察している通りだよ。さ、おしゃべりはもうお仕舞い。どうせ今アンタに何を話したところで、全て上書きされて消えちゃうんだし。さっさと済まそう」
そう云って、向こうの『私』は、どんどんこちらへ近づいてくる。
「私の『記録』をアンタの脳へ移植させてもらうからね」
348: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:56:38.13 ID:cp6WeGbSo
「無理だよ」
向こうの『私』が、私に触れ、身体も、意識も、何もかもを浸食しようと、重なってきた。
「さ、自分自身と、向き合おうね」
349: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:59:10.97 ID:cp6WeGbSo
・・・・・・
「トランスポート、正常に終了しました」
350: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 17:59:37.06 ID:cp6WeGbSo
「ようこそCGプロへ」
歓迎の言葉を述べる井上に、彼女は手を下ろし、ふぅ、と一息吐いてから、第一声を発した。
「ふーん、アンタが私のプロデューサー? ま、悪くないかな……」
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