12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:06:58.03 ID:Bw6Z329mo
彼女は俺のそんな反応すらも楽しんでいたのだと思う。
俺と彼女は、フェンスを背に、並んで座り込みながらも、ほとんど言葉を交わさなかった。
ときどきどうでもいいような質問をぶつけあったり、どうでもいいような話をしたり、本当にそれだけだ。
それ以外の時間はだいたい音楽を聴いて、ぼんやりと空を眺めていた。隣り合って座りながら。
それは少なくとも俺にとっては幸福な時間だった。
ふわふわと浮ついて音楽に集中なんてできなかった。
隣に座る佐々木が今どんなことを考えているのか、そんなことばかりが気になっていた。
けれど俺はちゃんと知っていたのだ。最初から。佐々木が俺のことなんてなんとも思っていないということを。
そうじゃなかったら、彼女がそんなふうに平然としていられるはずがないのだから。
あるいは本当はそんなことはなくて、彼女も俺のことを憎からず思っているのかもしれない。
でも、そう考えてしまった後には必ず首を横に振る。
両方の頬をぱちぱちと叩く。目を思いきり瞑ってから、もう一度開き直す。
そうでもしないと妙な勘違いをしたまま、佐々木のことをひどく傷つけてしまいそうな気がした。
あるいはそれは単なる言い訳で――俺は期待と表裏一体の落胆が怖かっただけなのかもしれないけど。
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