過去ログ - 女「じゃあ、一緒に帰ろっか」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/11(月) 01:03:30.26 ID:Bw6Z329mo

 俺がそのことを無神経にも報告すると、「わたし、そいつらと話もしたことないんだけど」と、佐々木は泣きだしそうな顔で笑ってた。

 その表情は、すごく魅力的だった。いたいけな強がりと頼りなさが融和していた。
 とてもかわいくて、いっそ性的ですらあった。

 だから俺はその表情を見た瞬間、

(この子と付き合ってデートして手を繋いでキスをしてセックスしたいもんだなあ)

 なんてことを考えた。結婚式は洋式がいいよな。子供は女の子が三人くらいほしいな。
 大きめのボックスカーに荷物を詰め込んで家族でキャンプに行きたいな。犬と庭付きの一戸建ても欲しい。
 そして風の強い夜には言葉も交わさずに寄り添っていたい。

 そこまで十秒を要さずに妄想できた。そしてその後、とても悲しくなった。涙が出そうなくらい。

 たった十五秒前後の短い時間の内に、俺の心は激しく変遷した。
 高ぶり、浮かれ、落胆し、最後には世界を呪った。

 だって、俺と佐々木は実際には付き合っていなかったし、キスやセックスどころか目が合うことすらろくになかったのだ。

 佐々木はたぶん、俺のことを起き上がりこぶしか何かと勘違いしていたんだろう。

 もちろんそのことに文句をつけるつもりはなかった。
 どちらかと言えば、俺はそのことを喜んでさえいた。

 佐々木春香という少女が、べつに誰だってかまわないはずの起き上がりこぶし役に、偶然にも俺を選んだという事実を。 
 



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